国際協力研究科 国際協力専攻 修士課程
目的と特色
サステイナブルな世界を目指すために国際的視点は不可欠ですが、具体的には何ができるでしょうか?国際社会の一員として何を発信して相手を説得して目指すゴールに近づけるでしょうか?そのためにはどのようなものの見方や提案のスキルが必要でしょうか?本研究科の教職員と大学院生はいつもこのようなことを考えています。
ものの見方の一例ですが、地球温暖化・難民問題・戦争や紛争などの具体的な課題を縦糸としながら、経済格差・人種や性差別・権力関係などの社会科学の概念を横糸にすると、それぞれの課題の捉え方が変わります。地球温暖化の例では、その原因である人類が排出する温室効果ガスを減らせば済む訳ではありません。その多くを排出する先進国と、排出量が少ないにもかかわらず海面上昇で苦しむ開発途上国では、責任の所在や資金負担の割合を含め温暖化対策の考え方が変わってきます。
このように本研究科のカリキュラムは、世界が直面する課題の考え方を横断的で実践的に学ぶことで、多様な視点から課題の理解を深めることができるようにデザインされています。
カリキュラムの特徴
(1) 基礎共通科目群
大学院での学修に求められるアカデミック·スキルの獲得とともに、研究対象である国際社会を理解するためのオリエンテーションとなる科目群です。基礎科目としては、政治学、経済学、社会学などの専門領域における考え方や分析方法を指導する「社会科学研究手法」、英語の研究論文を読みこなすための「Academic English」が開講されます。
また、国際学科目として「国際関係論」、「国際機構論」、「国際開発協力論」などに加えて、特定の課題やタイムリーなテーマを深く掘り下げる「国際社会ワークショップ」も開講されます。
(2) 専門科目群
大学院での研究活動を進めてゆくためには、専門性を高めるための系統的な学修が求められます。一方で研究関心をひろげつつ、他方で研究テーマを絞り込むという、一見矛盾した取り組みが必要となるわけです。本研究科では、こうした専門的学修や研究活動を、専門科目群にコース制を導入することでサポートしていきます。入学者には、オリエンテーションなどを通じて、以下に掲げる2つのコースいずれかを選択してもらい、その中で計画的な履修を促していきます。
<サステイナブル国際協力コース>
2016年にスタートした持続可能な開発目標(SDGs)を挙げるまでもなく、サステイナビリティ(持続可能性)は開発課題を考える上でのキーワードとなっています。この概念の重要性は、開発分野にとどまるものではなく、いまやあらゆる課題の解決に欠かせません。このコースで提供される「地球環境問題特論」はもちろん、「国際防災特論」、「平和構築·紛争予防外交特論」でも、持続可能性がカギとなります。SDGsの達成とも深く関わる「国際教育特論」、「国際保健医療政策特論」など、興味深い科目がそろっています。
<国際政治経済·地域研究コース>
国際関係で生起する現象を分析する上で学際研究の有効性には定評があります。従来の国際政治学、国際経済学をはじめとする学問領域に精通した教員が、具体的な分析対象への学際的なアプローチを提示します。アジア、アラブ·中東、ヨーロッパ·EU、北アメリカ、アフリカなど地域研究科目だけではなく、「国際安全保障特論」、「難民·移民問題特論」といった注目すべきイシュー、さらにビジネスやメディアに関連する科目も用意していますので、幅広い視野をもって課題を追及することができます。
(3) 演習科目
入学後、院生それぞれにアカデミックアドバイザーが指名され、学位取得へ向けた研究方針のアドバイスを受けます。一年次では、指導教員の下で「基礎演習Ⅰ·Ⅱ」を履修し、自らの研究テーマを絞っています。
さらに二年次以降には「演習Ⅰ·Ⅱ」で研究の深化と高度化に入ります。
少人数制は本研究科の特長ですが、とりわけ演習科目では、しばしばマン·ツー·マンの指導も行われています。「基礎演習Ⅰ·Ⅱ」や「演習Ⅰ·Ⅱ」については開講時限を固定せず、指導教員と話し合いながら時間や場所を決める集中講義方式をとっています。これは働きながら学ぶ社会人大学院ならではの仕組みです。
(4) 全講義科目ハイブリッド授業
国際協力研究科の講義科目をハイブリッド授業(大学院での対面授業をZOOMによるオンラインで同時配信)で行っています。仕事の繁忙期や諸事情で大学院に通学できない時など、その日の都合に応じて、対面授業かオンライン授業かを選べます。
(5) 修士論文または研究成果を選択できます
「修士論文」の提出だけでなく「研究成果」の提出で修士号を得ることができます。研究成果は指導教員が示した書籍リスト(リーディングリスト)から学生が書籍を選び、そのレポート(コア・レビュー)を提出します。例えば4月入学の場合、1年生前期末(7月)、1年生後期末(1月)、2年生前期末(7月)、2年生後期末(1月)の4回提出。最終審査面接に合格することで修士号を得ることができます。
修了に必要な単位は、修士論文提出と同じく、2年間で30単位です。
入学前に研究成果を選択した方は、入学試験出願時の研究計画書の提出は不要です。
(6) 国際協力研究科科目等履修生推薦入試
入学試験出願時から遡って過去5年間(この5年間は学生募集要項で入試ごとに期間を定めます。学生募集要項を参照してください)に国際協力研究科の科目等履修生またはプログラム履修生として在籍し、国際協力研究科の科目を2科目4単位以上単位修得し、少なくとも2科目の成績が「優」だった方は、国際協力研究科の科目等履修生推薦入試を受験することができます。
試験科目は「面接」のみです。筆記試験は免除されます。
科目等履修生として修得した単位は、履修修了後5年以内に正規生として入学した場合、10単位を上限として修了要件単位として認定されます。
◇早稲田大学との単位互換制度
2020年4月より、本大学院国際協力研究科と早稲田大学大学院社会科学研究科と単位互換制度を開始いたしました。 本大学院国際協力研究科の学生は、早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程の授業を履修でき、修得した単位は修了に必要な単位として認定されます。(他の大学院で修得した単位を含めて10単位を上限として認定します) 早稲田大学社会科学研究科修士課程で1年度に5名まで履修することができます。
開講科目
科目群 | 授業科目の名称 | 単位数 | 配当年次 | 期間 | 授業方法 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
|
|
|
|||||
基 礎 共 通 科 目 群 |
基 礎 科 目 |
社会科学研究手法 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |
Academic English | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
サステイナビリティ学 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国 際 学 科 目 |
国際関係論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | ||
国際機構論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際法特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際開発協力論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際社会ワークショップ | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
演 習 科 目 |
演 習 科 目 |
基礎演習Ⅰ(修士論文・研究成果) | 2 | ○ | 半期 | 演習 | ||
基礎演習Ⅱ(修士論文・研究成果) | 2 | ○ | 半期 | 演習 | ||||
演習Ⅰ(修士論文・研究成果) | 2 | ○ | 半期 | 演習 | ||||
演習Ⅱ(修士論文・研究成果) | 2 | ○ | 半期 | 演習 | ||||
専 門 科 目 群 |
サ ス テ イ ナ ブ ル 国 際 協 力 コ | ス |
地域環境問題特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |
国際教育特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
企業と開発-ソーシャル・ビジネス | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際保健医療政策特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際社会保障と国際貢献 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際防災特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
公衆衛生史特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
平和構築・紛争予防外交特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
地方自治体と国際協力 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
ODAと開発 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国 際 政 治 経 済 ・ 地 域 研 究 コ | ス |
ビジネス-企業と国際協力 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | ||
国際メディア特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
現代経済特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
開発経済特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
国際安全保障特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
難民・移民問題特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
アジア地域特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
アラブ・中東地域特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
ヨーロッパ・EU地域特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
北アメリカ地域特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
アフリカ地域特論 | 2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | |||
特 殊 講 義 |
Contemporary Issues A (国際協力特殊講義) |
2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 | ||
Contemporary Issues B (国際社会特殊講義) |
2 | ○ | ○ | 半期 | 講義 |
募集対象
国際協力研究科の主な対象は社会人です。しかし学部新卒者に対しても門戸は開放されており、学部卒業後ただちに入学することもできます。最近では定年退職後、国際協力の道で社会貢献をしようとする学生もいます。なお本大学院は、男女共学です。
修了後の進路
本研究科の設立以来、夜間や週末に開講する共学の社会人大学院としてこれまで200人以上の修了生を輩出してきました。修了生は国際協力関連のNGO職員、民間企業の幹部社員、政府機関や国際機関の職員など、本研究科で得た横断的で実践的なスキルを活かして活躍しています。
プログラム履修生制度
国際協力研究科には、通常の科目等履修生のほかに「プログラム履修生制度」があります。
プログラム履修生制度では、最長2年間在学でき、期間修了後、選択したプログラム(サスティナブル国際協力プログラム又は国際政治経済・地域研究プログラム) の中から4科目以上履修した修了者には修了証diploma が授与されます。
【科目等履修生とプログラム履修生が取得した単位の取り扱いについて】
科目等履修生およびプログラム履修生が、履修修了後、5年以内に本研究科に入学した場合は、履修期間中に取得した単位は、修士課程修了に必要な単位として10単位を上限に算入できます。