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人間科学研究科 人間科学専攻 博士後期課程

設置の趣旨

 高度情報化と少子高齢化を伴う社会の到来とともに、社会的、心理的環境が急激に変化しつつあります。私たちは増大する社会的混乱を受けて、深刻な内面の危機を迎えています。児童虐待、子どもによる家庭内暴力、夫による妻に対する暴力(DV)、引きこもりなどの家庭の問題、いじめ、校内暴力、不登校、学級崩壊など学校現場での問題、出社拒否や職場の不適応、あるいは自殺などの職業現場での問題は、その具体的な現れです。他方、現代医療の進歩は著しく、生命の維持コントロールが可能な時代を迎えて、ホスピスや一般病棟で死を迎える人たちをいかに援助し、近親者の死に対する悲嘆の作業をどのように支えるか、さらには移植医療が本格化する中で、臓器移植の生命倫理面からの検討など、さまざまな死に関する取り組みが、今日の社会的課題となっています。
 本大学院では、1993年より、人間科学研究科人間科学専攻修士課程において、発達心理学、社会学・社会福祉学、教育学、宗教学、死生学、臨床心理学という、人間科学諸領域について、主として社会人を対象とし、高度の専門的学識を要する職業人の養成を目的とする、教育研究を行ってきました。
  博士後期課程では、修士課程において展開してきた人間科学諸領域をさらに高度化し、社会に寄与する人材を養成するために、修士課程との継続性と専門性を考慮しつつ、近年の当該分野における教育研究の方向性や社会的要請、進学需要などを十分に勘案して、教育課程を構想しました。
 2002年度に、まず死生学と臨床心理学の分野に設置された人間科学専攻博士後期課程は、2005年度には宗教学、教育学の分野に拡大され、さらに2006年度からは、発育・発達学の分野にも博士後期課程が設置されました。

教育課程の編成と研究指導の特色

人間科学領域の発育・発達学分野では、心身の発達の諸相や、それに伴う養育上の問題等について、発達心理学的視点から研究を行います。また、子育て支援の現場や、発育・発達を基盤とした保健医療・心理学分野に従事する学生に対して、専門的知識を蓄積し、自立した研究活動が行えるように指導していきます。
 教育学分野では、主として学校教育、子どもの貧困、格差、家族、ジェンダーに関する問題について学び、研究指導をしています。様々な先行研究をレビューし、理論的基礎を構築して、さらに実証的分析によって問題にアプローチすることを目指しています。
 宗教学分野では、修士課程より一層専門性の高い研究を目指します。さまざまな宗教現象や文献の比較研究に基づく科目が開設されています。宗教学を専攻する学生は、特に文献的訓練を通して、専門性を高めていくように指導されます。
 死生学分野では、主に基礎死生学と臨床死生学を扱いますが、講義科目として、悲嘆体験者に対する心理的・精神的援助と、臨死患者に対するターミナルケアに関する研究、死生学の思想的および社会的背景について生命倫理研究を置きます。
 臨床心理学領域においては、力動的精神療法に力点を置いた心理療法学と心理査定の立場から、修士課程の教育と連携して、博士後期課程の教育研究が行われます。研究指導では、1年次から臨床研究論文の作成を指導し、臨床心理学領域の学術雑誌へ投稿させています。2年次後半からは、博士論文の作成に取りかかることになります。臨床心理学の講義科目としては、主として成人期にある人を心理的援助対象とする臨床心理学研究、子どもと母親を援助の対象とする心理療法研究、心理査定について総合的に研究する臨床心理査定研究が開講されています。
 死生学分野と臨床心理学領域では、高度の職業訓練と研究上の訓練を有機的に結びつけて指導も行っていきます。
 具体的には、死生学を研究する学生の場合は、死にゆく人々や悲嘆の仕事の援助者たちにおける指導者になるための、高度の職業訓練と研究活動を結びつけた指導を行います。このような専門援助者を指導できる人材の養成と学術研究とは、共に欠かすことができません。学生は、実践の場としての学外のホスピスや病院などの職業現場での経験等について、指導教員による研究指導を受け、博士論文完成をめざすこともできます。
  臨床心理学を研究する学生の場合は、学外の職場としての臨床現場でも臨床経験を積み重ねるとともに、平日午後や夜間、また大学附属心理相談室(東洋英和こころの相談室)の臨床活動にスタッフとして関わり、綿密な指導のもとに臨床活動を行います。ここでのスタッフ全体によるインテークカンファレンス・ケースカンファレンスに参加し、臨床の先輩として修士学生に対するリーダーとなり、心理療法・臨床心理的な地域援助・心理査定を含む、学外および学内の心理臨床の現場に深く関わります。これらの領域の研究から、学生の問題意識に応じて研究テーマを定め、研究指導を行っていきます。

研究指導の方法と学位の授与

 博士後期課程の修了要件としては、研究指導12単位を含む授業科目20単位の履修が求められます。所定の単位を取得し、博士論文に対する面接試験など付随の試験に合格することによって、博士(人間科学)の学位が授与されます。
 研究指導は、学生の研究テーマに応じて、研究指導教員と、それに協力する副研究指導教員で指導を行います。複数の教員による複合的な指導によって、偏りのない指導が受けられるようにしています。学生は1年次と2年次の終わりに、学内の研究成果発表会において教員と在学生の前で研究の進展を発表することが義務づけられているほか、関連学会での研究発表、論文発表の指導を受けます。
 研究指導のほかに、学生は講義科目の中から8単位以上を履修します。学生は各自の専門分野に直結した講義や、密接な関連性を有する科目を受講することによって、最先端の研究に触れ、研究の進め方を学ぶことができます。また、各自が所属しない分野の教員の講義においても、他分野の方法論から有益な研究上の示唆を得ることによって、幅広い総合的な視野を身につけることができます。
 博士論文は、原則として3年次の10月末を期限として提出し、審査を受けます。その後、必要に応じて成果発表(プレゼンテーション)を実施し、研究成果を報告することにより、学位の水準を維持しつつ、円滑な学位授与ができるように配慮します。なお、博士論文を提出する際には、専門領域の学会誌に掲載された副論文を添付します。

開講科目(2023年度以降入学生適用)

区分 授業科目の名称 単位数 配当年次 期間 授業方法
必修
選択
1年
2年
3年








 





教育社会学研究   4   通年 講義
宗教学研究   4   通年
神話学研究   2   半期
生命倫理研究   4   通年
臨床死生学研究   4   通年
臨床心理査定研究   4   通年
心理療法研究   4   通年
臨床心理学研究   4   通年
心理統計法調査研究   4   通年
心理臨床実践研究   4   通年
発達心理学研究   4   通年
特殊研究Ⅰ(研究指導) 4       通年 演習
特殊研究Ⅱ(研究指導) 4       通年
特殊研究Ⅲ(研究指導) 4       通年