「おもしろい」から始まる『今日のうんどうかい』
はしるの だいすき
詩 まど みちお
はしるのだいすき タッタタッタタ
つちをけって くさをけって かぜをけって
タッタタッタタッタタッタ おもしろい
はしるのだいすき タッタタッタタ
あしもはしる むねもはしる かおもはしる
タッタタッタタッタタッタ おもしろい
(作曲 佐藤真 『こどものうた200』 発行 チャイルド本社)
子どもは、よく走ります。嬉しい時や、開放された時や、友だちと意気投合した時などにタタターと走ります。その時の顔はたいてい笑っています。満面の笑みとはこのことだなと思わされる笑顔です。気持ち良さと共に「おもしろい」を全身で感じているのだと思います。子どものそんな気持ちになって「はしるのだいすき」を綴られたまど みちおさんのまなざしを感じます。
かえで幼稚園の庭では、芝生のまわりを「よーいどん」と走るかけっこが一年中見られています。また、園庭中をかけまわっての様々な鬼ごっこが繰り返されています。私は、飽くことなく疲れを知らずに楽しむ姿にいつも幸せを感じさせられ、一人ひとりの子どもに、交わりながら身体をいっぱいに動かすその楽しさを味わってほしいと願っています。
風が涼しくなってきた10月2日、遊びの時間の中での今年のうんどうかいの始まりを感じさせられる姿が見られました。
朝、年長組の子どもと保育者が使い古した黒板を庭へと運び、桜の木の下に立てかけました。(私は「今年も『きょうのうんどうかい』始まるんだわ」と早々と思い見ていました。)数人の子どもたちが「あっ、これだ。うんどうかいだね・・・何をする?」と、昨年の年長組がやっていたように頭を突き合わせて、今日やりたいことを出し合い黒板にチョークで書いていきます。そこに保育者から「まずはラジオ体操をして身体の準備をしましょうよ」等の提案も加わります。かけっこ・フラフープ・きつねとがちょう(鬼ごっこの要素のあるダンス)・玉入れ・鬼ごっこ(色おに、氷おに)・・・プログラムが決まるまでのもたもたとしながらの話し合いにも、子どもたちにとっての大事な体験があり意味があります。
こうして始まったその日の輪の中に、だんだんと「いれて」と子どもたちが加わってきました。プログラムが〈かけっこ〉になると、年少組・年中組の子どもたちも仲間入り。数人ずつがラインに並び、「よーい、どん」という合図と共に、風を切って走ります。芝生の周りを1周か2周まわってゴールする子どもたちは、やはりとびきりの笑顔です。そして「もう1回」と何度もかけっこの順番の列につながり直します。私には子どもが「おもしろい」と感じているのがよくわかります。
たくさんの「おもしろい」が重なっていくかえで幼稚園のうんどうかいは、これからの毎日が、そしてその時がいつも本番です。子どもはその一瞬一瞬を夢中に楽しみ、一生懸命に取り組みます。うんどうかいの中には、ひとりの取り組みと共に、同年齢、異年齢の交わりや関わりが生まれます。勝ち負けを喜んだり悔しがったりの体験もします。
他の遊びに夢中で、うんどうかいのおもしろさにはなかなか気づかない子どもたちもいるでしょうし、じっと見ることで参加している子どももいるでしょう。保育者は、そのような子どもたちを誘うタイミングや、集まりの時間にクラスのみんなでうんどうかいをすることを考えていきます。心地良いこの季節に、どの子どもにも身体を動かすことやルールのある遊びを共にすることのおもしろさを伝えていきたいと思っています。
今年のうんどうかいがどのように展開するか、一人ひとりにどのような体験をもたらか、そして個となかまがどのように育てられていくかが楽しみです。年中組・年長組のファミリーデイや、年少組のオープンデイでは、保護者の方々ともご一緒にうんどうかいのおもしろさを味わいたいとを願っています。
「喜ぶ人と共に喜びなさい」
ローマの信徒への手紙12章15節より
大漉知子