かえでの保育だより

「もう○歳」と子どもの成長を信じて託す時 「まだ○歳」と待たせたり子どもの安心を守ってあげる時

 6月から7月にかけて風邪の流行により、コロナ禍の3年間に潜んでいた感染症がいっぺんに子どもたちの中をめぐっていることを感じさせられました。このことを通して免疫力が子どもの身体の中に備わっていくことを願いながらも、ご家庭で過ごす親子の暮らしの安心をお祈りし続ける日々です。

 さて、夏休みを前にして健康であることをまず願いながら、子どもたちの「生活の力」が積み重なっていきますように、「もう」と「まだ」を意識して心にとめ使い分けていくことを保護者の方々に問いかけたいと思っています。 

 春から夏への1学期の間、子ども一人ひとりが幼稚園の日々の中で見せた成長の姿は大きなものでした。子どものことばや動きに、自分の目で見たたことや、身体でまねてやってみたことが、着実に積み重なっていきました。知らなかったことを知ること、やっていなかったことをやること、周りの子どもや先生の様子に興味をもったり憧れたりすることが、自分で動き出すきっかけとなっていました。そしてそこに先生たちのタイミングを見計らってのちょうどよいことばと手が添えられることで、遊び方や手や身体の動かし方のこつを得ると共に、生活習慣が積み重なっていく毎日でした。心を動かして順序を経て習得したものは、子どもの中に根付いていきます。

 夏休みの生活では、今まで積み重ねてきたことによる子どもの伸びようとする力を信じ「もう〇歳だから、これをしましょう。やってみましょう」と、子どものするべきことをそぎとるのではなく子どもに託していきましょう。それはけっして「やれるでしょ」と突き放すことではありません。子どもを見て子どもを育つ力を信じて、任せることです。大人が全てやってあげることや、子どもの要求に応えることが子どもへの愛情と思っていらしたかも知れません。(そのような時期や、そのような時もあります)しかし、「身につけてきたことや今こそ身につけていく時と思われることを、自分でやれるように助けることが愛情である」と思い直していきましょう。私の目には、「ちょっと先まわりしてやってあげ過ぎ。まだまだできないからと思ってしまい過ぎ」のご父母の姿が「惜しい」と見えます。

 ただ子どもが可愛くて全部してあげたくなってしまう方もいるでしょうが、大人の都合とでやってしまった方が楽であったり、時間に余裕ができるからという方もいるでしょう。子どものすることは、時間がかかったり、失敗したりするものです。「待っていられない」という思いで、無意識にさっさとしてしまう方もいるでしょう。「いやだー、やってー」という子どものことばに、つい応えてしまうこともあるでしょう。うまくいかないのが日常ではありましょうが、夏休みの日々はチャンスです。少しずつ少しずつ「もう〇歳だから、きっと自分でやっていける」と励まし、時間の余裕をもって、生活の力を育てていきましょう。

早起き・早寝、洗顔・歯磨き、着替え、食事、片付け等のお手伝い・お風呂・・・そして排泄(小さい方たちの紙パンツからの卒業・・・特に昼間のパンツ生活への切り替え時は今です)

 これらの生活のわざが子どもにとって自分のものになることで、子どもの生活(そして、おおげさですが一生)が軽やかに楽になります。子どもが軽やかに生活することは、結果として周りの大人が軽やかに過ごせることにつながります。

 年齢や発達にあった成長を願い、「もう〇歳」と思って支えましょう。

  一方、子どもがどんなにやりたがったとしても、年齢・発達に合わせて「まだ〇歳だから(小さいから)今はしません。そのことができる時を待ちましょう」と待たせることも大事です。幼稚園の生活の中でも保育者から「大きい組になったら」等と伝えることがあります。言われた時には「やりたーい」と地団太を踏んで泣く子どもも、その気持ちに寄り添われながら「悲しいでしょうが仕方ないね」と励まされるうちに、やがて自分の時を憧れの思いで待つようになります。待てるってすてきなことです。

  もうひとつの大人の役割として、子どもにはまだ触れさせたくない(子どもが知らなくて良い)大人の話題や夫婦のけんか、テレビニュースの悲惨過ぎる報道等から子どもを遠ざけ、子どもの心の安心を守ることも大切です。子どもを一人前扱いして何もかもを相談し、子どもの意見を聞く方もいらっしゃいますが、それは子どもにとってかわいそうなことだと私は思います。生活の中、大人が考え、大人が決めることがあって当然なのですから、「まだ〇歳だから、何も心配しなくて良い」としてあげてください。

 「もう」と「まだ」・・・これを間違わずに、と思います。そのラインが難しく感じられる方はご相談にいらしてください。喜んで一緒に考えさせていただきます。

 健やかに、大らかに、朗らかに、良い夏休みを。

「何事にも時がある・・・・・神はすべてを時宜にかなうように造り、また、永遠を思う心を人に与えられる」    

(旧約聖書 コヘレトの言葉3章1節・11節より)

                                    大漉 知子



ページトップへ