かえでの保育だより

くりかえし くりかえし

 子どもと歌うこと・賛美することを幸せと思っていた私でしたが、この数年高音がかすれて出なくなり、子どもに申し訳ないと思うようになっています。年齢のせいと受け入れることも大事でしたが、思い立って夏の終わりに声楽を専門とする友人にレッスンを願いました。まだ数回受けただけで成果を問うことはできませんが、そこで新鮮な気づきと確認を与えられている私です。それは、教えられた基本をくりかえし身体全体で覚えていくことの楽しさと大切さです。「あぁ、子どもたちは、生活の中・遊びの中でここを通っているんだ」とあらためて思いました。その時に励ましとなるのは、堅くなった私の心身に辛抱強く大らかに寄り添い、肝心なポイントを教えてくれる人の存在であることも実感しています。

  子どもの自発性や主体性を大切にすることや、一人ひとりの違いを大切にすることは、私たちの保育の心です。それと同時に、共に居る大人として、どの子どもにも基本となる生活習慣や遊びの方法や楽しさを、時をとらえて丁寧に順序性をもって体験させていくことに心をかけています。

  9月、夏休みを経て園に戻ってきた子どもたちを見ていて、春から夏の間に積み重ねた遊びや習慣がそれぞれの中に残っていること、身につけたことを安心して堂々と自然にしていること、そこからまた次の豊かさへと続いていることを感じさせられています。それらはどれも時間をかけてくりかえして身につけたものであり、身体と感覚で覚えたものです。子ども自身が周りを見て、見様見真似で動き出すことから得ていったものもありますが、保育者にことばや手を添えられて順番やコツを教えられたものもあります。そのプロセスで、保育者は子どもの心を理解しながら、「いつか、この子ども自身のものになる時がくる」ことを楽しみに待ち、何度も何度も寄り添って伝え ていました。焦らずたゆまずにです。

  秋から冬の日々も、子どもと共に居る者として、くりかえしの時またはやり直しの時を喜んで保障し、ちょうどよく支える者でありたいと思います。

 

「喜ぶ人と共に喜びなさい」(ローマの信徒への手紙12章15節より)

          大漉知子  

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