かえでの保育だより

願 い ―配慮と思いやりの中で、子どもにおおらかな子どもの時間を―

 休園の期間を支えてくださった神さまに感謝します。そして、幼稚園の再開を私たちとともに待ってくださった全ての親子に感謝します。

「感染予防のための距離は必要。しかし、心の距離は離さないでいたい」という思いをもって、数か月を過ごしてきました。そのために、まず私たちの間にいてくださる神さまに一人ひとりの子どもとそのご家庭をお守りくださるよう、子どもたちの名前をあげながら毎日祈りました。また手紙という手段を使って、週ごとに思いの応答をしてきました。充分なことでは無かったかもしれませんが、ちょこちょこと返ってくる子どもや保護者のことばから、心の距離を離さずに保てたことを感じています。 いよいよ幼稚園に子どもたちが戻ってきます。どのように心と身体を動かしていくのでしょうか?一人ずつのそのはじまりの物語をよく見て楽しんで、支えたいと思っています。

この時に、あらためてのお願いがあります。

ここから先も、新型コロナウイルスの感染予防への取り組みは続きます。専門家の話では、元気に登園した子どもから子どもへの感染の可能性は低いとのことです。しかし、まったく心配が無いとは言い切れません。保護者や教職員からの感染や、保護者同士教職員同士の感染も起こり得るかもしれませ.ん。幼稚園が人と人の心を親しく交わし合う場である限り、そのことをわかりあい、それでもなお子どもにとって集団の場の大切さを思って保育をすすめます。園としてはでき得る限りの細心の配慮と対策をとって臨みますが、リスクをゼロにすることはできません。保護者の方々も登降園の道中での安全安心をはかり、園の中でもお互いに距離をとって関わるなどの注意をしてくださると思っていますが、それでも不安は残ります。それらのことを、理解していただける信頼関係を築いていきたいと思います。その上でも万が一感染者が出た場合には命を守るための休園措置などの対処をすることになります。

私から特にお願いしたいことを伝えます。今やこの感染症は、誰がかかっても誰が持ち込んでもおかしくはないものです。おそらく(私を含め)誰もが「自分によってクラスターをつくってしまったらどうしよう」というような心配をもっていらっしゃることでしょう・・・・。どうぞ感染してしまった人が後ろめたさをもって「申し訳ない」と苦しまれることのないような風土を皆でつくっておきましょう。もしも自分であったら・・を考えて、責めずに温かく受け止められるよう心を備えていましょう。それとともにかえで幼稚園の外のコロナウイルス感染者や医療従事者の方への偏見や差別もあってはならないことと思っています。ここにも思いやりが必要です。心配はぬぐえませんが、そのことにはとらわれ過ぎずにこの感染症をよく知り、手洗いうがいをはじめとする対策を習慣とし、密接を避けるコミュニケーションを続けていきましょう。ご理解ください。

 幼児は、子ども同士のふれあいやまねしっこや関わり合いから喜びや葛藤の体験をし、学んでいるものです。それがごたごたと展開する場が幼稚園です。夢中になって身体を寄せ合い遊ぶことを全て止める生活はしたくないと思います。でき得る除菌と換気をし、手洗いの励行を習慣とし、大人数の集団にならないように調整して、子どもらしい日常を守っていきたいと思っています。(それでもどうしても登園が心配な場合はご相談ください。)

 すでにいくつもの行事が中止や延期となりました。保育が始まった後も感染予防のために例年と同じようなことはできません。残念なことですが、命を守ることが優先です。様々の中止の中でも年長組の追分キャンプ中止にはがっかりされる方が多いと思われます。2020年は追分寮自体が閉鎖され、学院のどの部も使用しないこととなりました。楽しみにしていらした方にとって気持ちのおりあいをつけることは辛いことと察します。察した上で申し上げます。長い人生には、いくつもの思い通りにならない時があります。すぐには納得がいかない悲しみや苦しさも訪れます。しかし、そこを誰かとともに通り抜ける体験が、また私たちを成長させてくれると信じます。「誰か」とは家族や友だち、そして私にとってはイエスさまです。

 幼稚園では、キャンプに限らずこれからの行事について、同じことはできなくとも何か違う形で子どもたちに豊かな体験をもたらすことを創造的に考えていきます。

 コロナウイルス感染をめぐり、様々な規制や変化が生じていますが、その中を子どもとともに生かされていることを受け入れ、子どもたちのおおらかな日々をご一緒に支えさせてください。

 「励まし合いなさい。思いを一つにしなさい。平和を保ちなさい。そうすれば、愛と平和の神があなたがたと共にいてくださいます。」 (コリントの信徒への手紙Ⅱ 13章11節より)

                                     大漉 知子

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