かえでの保育だより

ひびきあって、憧れて、動き出して

青い空に美しい雲、そしてトンボが舞う秋晴れの朝、私は庭に出て子どもたちの中にゆっくりと身を置いていました。すると、私の心の余地をみつけたかのように、次から次と子どもたちが近付いて来ては、親しみ深いまなざしを向けたり、寄りかかってきたり、「なにしているの?」「ねえ、見て」「ちょっと来てください」等と言います。私は、その気持ちにちょうどよく応えることも楽しんでいました。

 その間ずっと庭の中央ではかけっことリレーが繰り返されていました。(和やかの中に活気や躍動が感じられ、今年の『うんどうかい』の始まりを思わされました)

 さて、私が年長組の数名に呼ばれ、砂場の脇での『新茶工場』(干した葉っぱをすり鉢ですって、きれいな緑のお茶を作る研究中でした)を訪ねていた時、年中組のA子ちゃんが「ピザが焼けたから食べに来てください」と誘いに来ました。「わかった、待っていてね」と伝え、少ししてからままごと小屋の前に用意されたテーブルに行きました。そこには砂や葉っぱや石を使って時間をかけて作っただろうと思われるピザが数枚置かれていました。「わぁきれい、いただきます・・・・おいしい」と食べる私をA子ちゃんは嬉しそうにみつめます。続いて出されたお茶をいただき、「ごちそうさま。ねえA子ちゃん、ここは良い場所ね。風が気持ち良いし、桜の木が日陰をつくってくれるし、かけっこだって見られるしね」と私が言うと、思いがけないことばが返ってきました。

 A子「わかる? 私、いつもうっとりしているの」・・・・私「えっ? うっとりしているの?」 A子「そう、ここで大きい組の走るのを見て、うっとりしているの。うっとりしちゃうの・・」 私は、なんとも幸せで愉快な気分になりました。そして、「そうねえ、走っている姿にうっとりしちゃうって私もわかるわよ。それとね・・・私は、こんなにおいしいピザを作ったA子ちゃんにも、うっとりしているわ」と告げました。

 子どもたちは、出会う遊びとそこにいる友だちや先生の姿を、見て、憧れて、「いつか自分も!」と願いをもち、待って、やってみて、体験を広げています。周りとひびきあって今を生きています。幼稚園は、そういう時間と空間と人間関係を大切にします。私は子どもの傍らにいる者として、「何にひびきあい何を思いめぐらしているのか」という子どもの気持ちを尊重し、見守り、タイミングをとらえて教えたり押しだすものでありたいと思います。

  「あなたがたはそれぞれに賜物を授かっているのです」

(ペトロの手紙Ⅰ 4章10節より)

大漉 知子

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