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2024年度9月期学位授与式式辞

2024年9月16日(土)、2023年度9月期大学院学位授与式を行いました。

星野学長の式辞です。

 東洋英和女学院大学大学院修了の皆さん、修了おめでとうございます。皆さんの修了を教職員一同、心からお祝い申し上げます。また、皆さんの大学院生活を力強く支えてくださったご家族、関係者の皆様にも心から祝意を申し上げたいと思います。こうして、学院の副院長と宗教部長、大学院の教職員が列席し、また学院同窓会と大学院同窓会の代表をお招きして、厳かに本日の学位授与式を挙行できますことは、私にとってもこの上ない慶びであります。指導教授の皆様方にも、深く感謝申し上げます。

 皆さんは、強い意思と志を持って東洋英和女学院大学大学院を選ばれて入学し、勉学と研究に励み、所定の課程を修了し、学位を取られて、本日ここに、めでたく修了の日を迎えられました。大学院では、研究に費やす時間を作るなどにおいて大変なご苦労も多々あったとも思いますが、一方で、楽しかったこと、嬉しかったことも沢山あったとも想像します。今日の充実した喜びの日を迎えるまでには、修了生の皆さんには仕事と学問の両立を含め、並々ならぬご努力もあったことと思いますが、そのご努力と獲得された成果に対し、まずは深い敬意を表したいと思います。

 皆さんは今日、高等教育の最終段階に位置する大学院修了の学位記を手にされました。皆さんは私共東洋英和の建学の精神である「敬神奉仕」の理念の下、本大学院で高度な専門職としての訓練を受け、研鑽を重ね、それが評価されて学位を授与されたわけです。どうか、東洋英和女学院大学大学院の修了生であることに誇りを持ち、本学で研究された成果や、身に付けた研究手法を基礎とし、また出発点として、現実社会が直面している困難さ、複雑さにこれからも真正面に立ち向かっていくべく、より一層研鑽を重ねていっていただきたいと思います。

 さて、今、私たちは先が見通せない視界不良の時代におります。これまで私たちが築きあげてきた筈の自然、人間、社会に関わるシステムが調整機能や安定機能を失い、暴走する状況を目の当たりにしています。それは、気候変動であり、パンデミックであり、格差と分断であり、そして武力による他国への侵攻を正当化する国家権力の存在と、民主主義国家が力を合わせてもそのような横暴を喰い止めることのできない世界体制の状況にある、ということです。この大きな転換点ともいえる時に、皆さんは本学で研究を進め、専門領域で深い成果に到達され、その過程で人間と人格を陶冶されて、これからさらなる研究や実践の世界に踏み出さんとされています。

 修了生の皆さんは、私が入学式の式辞でお願いした、自ら立てた問いに誠実に向き合い、事実や真実に即して解を導き出す努力を積み重ねて成果を挙げられました。今後も、本学で培ったその学問の手法によって、現実社会の諸々の課題に向き合い、真理に忠実であり続けていただきたいと強く希望します。これからも探究心を忘れず、常に新たな問題に挑戦し、解決策を見出していってほしいと願っています。その使命はまた、私たち教員も同じように担っていると認識しています。私たちは、皆さんに続く後輩の院生に対しても高い教育研究の水準を維持し、さらに一段と高めて、課題に積極的にチャレンジしたい、そのように考えております。

 今ほど、修了生の皆さんに、学位記とともにバラの花をお贈りしました。この花の贈呈は東洋英和女学院の慣行で、その起源は戦前まで遡ります。3月には黄色い水仙の花を、9月にはバラの花をお贈りしています。バラの花言葉には「上品」「気品」「輝かしい」などいろいろあるようですが、今日の皆さんに最もふさわしい花言葉は「誇り」であろうと思います。皆さんは、バラの花の一輪一輪に込められた「敬神奉仕」の建学の精神を、どうか忘れないで頂きたいと思います。それこそが、増々複雑化する世界に向かって船を漕ぎ出さんとされる修了生の力強い羅針盤となって支えてくれるに違いありません。その羅針盤が指し示している方向は、キリスト教学校である東洋英和のスクールモットー、すなわち「敬神奉仕」という四文字そのものです。

 この間、東洋英和女学院大学と皆さんを支え続けて下さいました、地域の皆様、並びに関係各位に対しまして、重ねて、心より御礼申し上げます。皆さん、どうぞ、東洋英和女学院大学大学院の修了生であるということに誇りを持ち、胸を張り、大学院での研鑽を通じて得た自身の成長や仲間の広がりをいま一度しっかり確認して、東洋英和女学院大学大学院で育てた大きな両の翼で空高く舞い、羽ばたいて下さい。

 最後に、本日の修了に当たり、私の好きな詩人で、批評家、随筆家でもある若松英輔(えいすけ)さんの詩を贈ります。キリスト教信徒の若松さんの詩集「美しいとき」の中に出てくる「若い人たちへ」という題が付けられている詩です。

 

君たちは こんなに 柔らかな知性を 持っているのだから そんなに早く 分かったなどと 言ってはいけない

世の中には 分かることと けっして 分からないことが 存在するのを 見過ごしたままで

分かることだけで 自分の世界を 塗りつぶして 何かを分かったように 思い込んでは いけない

ほんとうに 輝きたいなら 君は 誰かと 比べるのを 止めなくてはならない

ある人より 優れている ということになっても すぐに 別な人に 追い抜かれるかもしれない

君が 誰でもない 君であるなら 誰でもない光を 放つようになるだろう

本当に 輝きたいなら 君は いつも 君自身でいなくては ならない(※)

 

 以上ですが、皆さんは、自信をもって、皆さん自身でいらしてください。そして、皆さん自身、キラキラ輝いて、ご自身の道を邁進していってください。

 皆さんの未来が前途洋々で、明るく、限りなく広がることを信じ、またこれからのご活躍を心より祈念して私の式辞といたします。本日は改めて、大学院修了、おめでとうございます。

 

2024年9月14日

東洋英和女学院大学大学院

学長 星野三喜夫

(※)若松英輔「詩集 美しいとき」(亜紀書房、2022年、p96~p99)から引用。

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