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2023年度後期入学式式辞

2023年9月16日(土)に大学院後期入学式を行いました。

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星野学長の式辞です。

東洋英和女学院大学大学院に入学された皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。教職員一同、皆さんのご入学を心から歓迎いたします。

今年の春まで3年間続いていた新型コロナウイルス感染症もようやく収束の方向になり、明けない夜明けはない、という言葉通り、夜明けが来ています。本日の大学院入学式はこれまでと異なり、マスク着用を任意とする中での挙行を新入の院生の皆さんとお祝いできますことに、大学院を代表して祝意を申し上げます。

申し上げるまでもありませんが、大学院は社会が用意する高等教育制度の最終段階に位置しています。もちろん、人生のすべての時間を通して、人間は学びを止めることはありません。しかし、用意され、準備された環境のなかで、教員や職員の手厚い支援の下で学ぶ機会は、皆さんにとって極めて貴重なものになるに違いありません。

本学は、建学の精神である「敬神奉仕」の理念に基づき、専門職業人の育成と豊かな国際性と広い視野を持つ人材の育成をめざす教育を行う大学院です。皆さんは、職場や家庭において社会人としての責任を果たされながら、さらに大学院において専門的な知見の獲得と学問的な研鑽を積まれようと決意をされて、この大学院の門をくぐられたと思います。いわば二足の草鞋を履くわけですが、そのことの大変さは十分に想定されておられるでしょうし、ご自身の覚悟と周囲の励ましとがあればこそ、敢えてその道を選ばれたのだと確信しております。いずれにせよ、本学に入学の皆さんの強い意志と高い志に対して、心よりの敬意を表したいと思います。

私どもの大学院の母である東洋英和女学院は、1884年の創設ですので、今年は創立139年目に当たり、来年140周年の節目を迎えます。大学院は東洋英和グループの中では最も新しい部門であり、大学本体が開学された1989年から4年目の1993年に呱々の声を上げました。以来、人間科学研究科と国際協力研究科の2つの研究科を合わせますと、今日に至るまで累計で900名を優に超えるそれぞれの研究領域で修士号あるいは博士号の学位を授与し、学院の建学理念である「敬神奉仕」を具体的に実践する有為の人材として巣立っていきました。東洋英和女学院という名前ではありますが、本大学院は、男性・女性を問わず学びの場を提供し、日本の社会・経済における価値の多様化、高齢化、国際化の発展に対応できる高度な知識と幅広い視野をもつ、問題解決型の職業人育成を目標にしています。

さて、我々の社会は、小さいものから大きいものまで、多くの問題や課題が山積しています。どんなに学問や技術が進歩しても、問題は解決するどころか、むしろ増えているのが現状です。2020年以降続いてきたコロナ禍は大きな社会構造変革を起こし、諸々の心象風景がまさに「動」から「静」へ180度パラダイムシフトした感がありました。ロシアのウクライナ侵攻が継続し未だに収束の目途がついていないという問題、持続可能な社会における生産と消費の問題、地球温暖化、これからも発生するであろう人類が経験したことのないパンデミックの発生と対応、それから生成系AI技術の発展などなど、話題には事欠きません。そのような中、皆さんは本学大学院に入学され、これから、高度専門職を目指して歩まれようとされています。

世界が目まぐるしく変動を続け、先行きが見通せない試練の渦中にあるからこそ、皆さんにはぜひ「新しい時代を見極める目」を養って欲しいと思っています。大学院の課程において皆さんに求められるのは、徹底的に「突き詰めて、思考をする」という作業です。皆さんがこれからどのようなテーマを選ばれるにせよ、対象となる問題や課題を特定し、それがなぜ起きているかを「問い」続け、自分なりに仮説を立て、それが正しいかどうかを、一定の方法論で確認し、検証・論証して結論を導いていく、途中で見つけた疑問や疑義に対しては、まずは異を唱え、共に歩む仲間の院生と議論を戦わせてください。それが皆さんのこれからの研究において大きな原動力になります。それこそが、大学院生としての皆さんがこれから獲得すべき「学問の作法」でもあります。直ぐに答えを求めようとするのではなく、まず「問い」、仮説を設定し、検証を繰り返してください。そのような課程を経ることを通じて、先を見通す洞察力が高め、影響力を持って正しいビジョンを広められる社会のリーダーになって頂きたい。それが院生になられた皆さんへの私どもの願いです。

大学院での皆さんの研究は独自性・独創性が求められる分、重荷や苦労が伴い、ややもすると孤独に陥りがちです。独創性の「独」は、孤独の独であり、独立の独でもあり、要するに一人で創り出すという意味ですが、しかし、皆さんはこの大学院では決して一人ではありません。この大学院では共に歩む院生仲間がいます。研究の先達である教員がいます。さらには、歴史の彼方から文献や業績を通じて啓発してくれる学問上の偉人たちが控えています。平日の夜間や土曜の研究や実習等は大変だろうと思いますが、私共大学院で濃密な時間と空間を共有し、教員や仲間と切磋琢磨し、社会をより良い方向に導く力強いリーダーになって頂くよう、切に願いします。皆さんの研究が進み、夢が叶い、希望が実現できるようお手伝いするために私共が控えていることをいつも覚えておいてください。

皆さんの本大学院での研究が、充実し、実り多いものにならんことを、また本学での研鑽が、東洋英和の先達たちがそうであったように、皆さんの今後の人生を支える力強いバックボーンとなることを期待し、私の式辞といたします。

ようこそ東洋英和女学院大学大学院へ。ご入学、誠におめでとうございます。

 

2023916日 東洋英和女学院大学 大学院 学長 星野三喜夫

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