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2021年度後期入学式・池田学長式辞

 2021年9月18日(土)、大学院において、2021年度後期入学式を挙行いたしました。

式 辞

 皆さん、このたび本学大学院への御入学・御進学、まことにおめでとうございます。昨年度は、新型コロナ禍という私どもが経験したことのない未曽有の事態の下で、前期・後期いずれの学期においても入学式を執り行うことができませんでした。このパンデミックは現在もなお収束には程遠い状況にあり、いわゆる緊急事態宣言が延長されているのは皆さんもよくご承知のところです。それでも今年度は、感染防止のためにさまざまな施策や措置をとりつつ、ともかくこのような形で式典を挙行することが可能となりました。これも皆さんのご協力あってのことと先ず以て感謝申し上げます。

 申し上げるまでもありませんが、大学院というところは、社会が用意する高等教育制度の最終段階として存在しています。もちろん、人生のすべての時間を通して、人間は学びを止めることはありません。しかし、用意され、準備された環境のなかで、教員や職員の手厚い助けの下で学ぶ機会は、皆さんにとって、極めて貴重なものになるにちがいありません。

 さて、これから研究者や高度専門職を目指して歩みを始めようとされている皆さんに、現下のコロナ禍とどう向き合うべきかについて私の考えるところを若干なりとも申し上げたいと思います。何よりもまず、このコロナ禍が研究や調査の遂行上、大きな障害となっている事実は否定できません。どのようなテーマを選ばれるにせよ、研究の対象となる地域、あるいは人々、事象について、実際に現地に赴き、あるいは対面で取材をするといった手法は不可欠だろうと思いますが、国内外を問わず、移動して人と接する調査などは、極めて大きな制約を受ける結果となっています。その意味では、私どもは試練に立たされていると言えるでしょう。

 しかしながら、そのような試練は同時に発明と工夫を生み出します。私どもの場合、いわゆるオンライン化がその典型です。授業はもとより、各種の会議・会合や、学会など学内外の研究交流や情報交換の機会も専らWEB上で開催されるのが当たり前になりました。厳しい出入国規制は、国際会議や現地調査、現地における対面取材などさえも画面を通しての接触に置き換えつつあります。

 こうした新たな手法の登場とこれを駆使した新たなネットワークの活用は、私どもにこれまで考えられなかった研究や調査の地平を切り開くチャンスを与えてくれたとも言えます。皆さんがこれからの大学院での学びにおいて、これらのチャンスを最大限に活かし、それぞれのテーマに関する知見を深めて行かれるよう、心より祈念申し上げる次第です。

 さはさりながら、であります。冒頭に、社会が用意する高等教育制度の最終段階に位置づけられるのが大学院であると説明いたしました。各領域の最先端の研究や最新の知見に接するという点では、なるほどオンライン化は優れた手段であり、有効な道具となるでしょう。しかしながら、大学院は知識や情報の伝達や意見交換、あるいは指導・指示を受けるだけの場ではありません。中世のヨーロッパにおいて、ウニヴェルシタスとして出発した、大学院を含む大学という存在は、本来は知的好奇心に駆動された(Curiosity Driven)人々が構成する「知識追求の場としての共同体」にほかなりません。共同体、すなわちコミュニティーと称するからには、構成員である院生や学生及び教職員の間に人格的な関係が構築されていなければならないはずです。そして、そのような人格的関係の構築や維持は、生身の人間が対面で対話し、接触することによってのみ生まれるに違いありません。皆さんにはこのあたりを念頭に置いて、オンラインと対面とを適切に使い分けながら、これからの大学院生活を楽しんで過ごしていただきますよう切に望んでおります。

2021年9月18日

東洋英和女学院大学

学長 池田明史

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