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2021年度9月期学位授与式・池田学長式辞

 2021年9月18日(土)、大学院において、2021年度9月期学位授与式を挙行いたしました。

式 辞

 修士号の学位を授与されて、あなたは本日ここに晴れて大学院の課程を修了されました。まことにおめでとうございます。仕事と学問とを両立させてきたあなたのこれまでのご努力に対し、そしてその努力を支え続けたご家族や職場の同僚の方々のサポートに対しまして、心からの敬意を表したいと思います。にもかかわらず今年度の学位授与の式典に関しては、新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言が継続中であることに鑑み、これを簡略化して実施することとなった結果、ご家族やまたご来賓の皆様には、出席を控えていただくようお願いせざるを得なくなりました。まことに申し訳なく思いますが、これも感染防止に万全を期すための措置としてご理解を賜わりたく存じます。

 社会人として昼間は仕事に精勤し、その疲れを抱えたままこの夜間大学院に通われて学問の研鑽に励まれました。とりわけ過去2年間は、ご勤務先においてもご家庭にあっても、コロナ禍の蔓延という予想もしなかった事態に直面して多くのご苦労を重ねられたことと拝察いたします。コロナ禍への緊急対応として導入された遠隔授業に対して、慣れない中にも緊張感と集中力をもって取り組まれたことでしょう。その後、講義や実習、あるいは指導が部分的にもせよ対面型に戻った時には、いつもの年度とは異なる感動や充実した雰囲気を味わうことができたのではなかったでしょうか。当たり前の日常が実は当たり前ではなく、文字通り有難きこと、感謝すべきことという気づきにつながったに違いありません。

 さて、このコロナ禍のような厳しい現実に直面するとき、人間はえてしてものごとを単純化して理解しようとする方向に傾きがちなのではないでしょうか。どうもわれわれには社会の現象や事件に対して、その現実が厳しければ厳しいほど、あまりにも単純な、短絡的な解釈を当てはめてしまう性癖があるように思えるのです。それらの現象や事件は、実は複雑に錯綜した要因が積み重なって出来しているにもかかわらず、そうした個々の要因をそれぞれに分析して、そこでの関係性とは何かを追求するという、地味で、ある意味では退屈な見方よりも、大上段に振り被った議論で白か黒かをはっきりと切り分けてくれるものに飛びついてしまう傾向があるのではないでしょうか。

 通説にしたがえば、ウィルスは生物ではないので、主体としての意思も意図も持たないはずです。それが接触によってわれわれの社会に感染の拡大を惹き起こすという点で、主体ではなく関係性こそが問題だということをわれわれに示しています。国籍や性別、年齢など全く無関係に広がるパンデミックに対して、国家や社会といった主体の側は、その境界を閉ざし、移動を止め、関係を断つことで対抗しようとしているかに見えます。グローバル化という言葉に象徴されるように、関係性の拡大によって成り立ってきたわれわれの社会は、そのような関係の遮断や排除にどこまで堪えることができるのか。まさに世界は、深刻な岐路に立たされていると言えます。

 そうした状況にあって、この大学院で高度な専門職としての訓練を受け、修士の学位を授与されたひとには、現実の複雑さに堪えるという姿勢を全うしていただきたいと強く願います。われわれの社会が直面している現実の複雑さにたじろがず、これと真正面から向き合う勇気を持っていただきたい。

 本学では学位記とともに修了生に対して3月には黄色い水仙の花を、そして9月には赤いバラの花をお贈りすることにしております。これは東洋英和女学院の慣行であり、その起源は戦前にまで遡ります。この花の一輪一輪に込められた「敬神奉仕」という英和のスクールモットーを、どうか忘れないでください。それこそが、世に氾濫する複雑さに堪えながら懸命に前へ進もうとする修了生の拠りどころとなってくれるに違いありません。このことを確信しつつ、私の式辞といたします。 

2021年918

 東洋英和女学院大学

 学長 池田明史

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