2023年度前期大学院入学式を挙行いたしました
2023年度前期大学院入学式を4月1日(土)に挙行いたしました。
人間科学研究科23名(人間科学領域教育学関連分野2名、死生学関連分野3名、
臨床心理学領域14名、幼児教育・発達臨床学領域4名)、
国際協力研究科7名の新入生をお迎えいたしました。
星野 三喜夫学長の式辞をお届けいたします。
東洋英和女学院大学大学院 入学式式辞(2023年4月1日)
東洋英和女学院大学大学院に入学された院生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。皆さんのご両親、ご家族、ご親族、そして関係者の方々、新院生のご入学を教職員一同心からお祝いし、歓迎いたします。
新型ウイルス感染症のために本学大学院の行事はこの3年間、何かと制約を受けてきましたが、本日、この入学式を、マスク着用を個人の判断に委ねることにして開催することになりました。もちろんウイルスが消えてくれたわけではないので、感染防止を施した中ではありますが、ここに、晴れて、院生1年生となられた皆さんと教職員とで、厳かに入学式を挙行し、お祝いできますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
大学院は社会が用意する高等教育の最終段階に位置しています。本学は、高度専門職業教育をめざす社会人養成の大学院ですが、皆さんの中には様々なバックグラウンドの方々がいらっしゃると思います。学部を卒業されてそのまま大学院に進まれた方もいらっしゃるでしょうし、あるいは、職場や家庭において大きな責任を果たされながら、さらに大学院において専門的な知見の獲得と学問的な研鑽を積まれようと決意をされて、この大学院の門をくぐられた方もいらっしゃると思います。そのような方はいわば二足の草鞋を履くわけですが、そのことの大変さは十分に想定されておられるでしょうし、ご自身の覚悟と周囲の励ましとがあればこそ、敢えてその道を選ばれたのだと確信しております。いずれにしましても、皆さんの強い意志と高い志に対して心より敬意を表するものであります。
私共のこの大学院の母胎である東洋英和女学院は、1884年の創設ですから、今年は創立139年目に当たります。大学院は東洋英和グループの中では最も新しい部門で、大学本体の開学に遅れること4年、1993年に出発いたしました。以来、人間科学研究科と国際協力研究科の2つの研究科を併せますと、今日に至るまで累計で900名を優に超える修士号あるいは博士号の学位を授与し、学院の建学理念である「敬神奉仕」をそれぞれの領域で実践する有為な人材を輩出してきました。
さて、2020年以降3年続いた新型コロナ感染症は、5月8日からは感染症法上の分類がこれまでの2類から5類へ変更され、ようやく峠を越えようとしています。ウイルスが周りからいなくなるわけではありませんが、一つの大きな節目を迎えるのは確かです。コロナ禍は、予期せぬ、望まない災禍ではありましたが、しかし、私共の大学院でもオンライン教育を整備、活用するなどして対応してきましたし、新たな教育環境の構築が、単に一時的、付加的なものではなく、発展的に取り組む課題であることを私たちに強く認識させてくれました。
この3年間のコロナ禍は社会のあらゆる面で閉塞感という化学反応を引き起こしてきました。あたかも真逆の世界が訪れたかのように、諸々の心象風景がまさに「動」から「静」へパラダイムシフトをさせられた期間でもありました。そのような中で、現実の政治経済社会は、私共の目に見える、見えないに関係なく、大きく、しかし確実に変容してきています。昨年2022年だけをとっても、例えば2月にロシアによるウクライナ軍事進攻が始まり、国際秩序を大きく揺るがしています。いつどのような形で収まるのか未だに予想さえできない状態です。その結果、政治面では安全保障問題や地政学リスクが大きく高まっていますし、経済面ではインフレと物価高の進行が世界経済を混乱に陥れ、日本を含む各国・地域に影響を与え続けています。そのような国際秩序の変容と政治経済の不安定化という環境変化の大波が押し寄せている中、皆さんは本学大学院に入学されたわけです。これから、研究者や高度専門職を目指して歩まれようとされている皆さんには、世界が目まぐるしく変化し続け、先行きが見通せない状況にあるからこその、「新しい時代を見極める目」を養う必要があります。大学院の課程において皆さんに求められるのは、徹底的に「考えぬく」こと、つまり「詰めて、思考をする」という作業です。皆さん一人ひとりがこれから指導教員のもと、どのテーマを選ばれるにせよ、対象となる問題や課題を設定し、それがなぜ起きているかについて自分なりに仮説を立て、挑戦と失敗、修正と再挑戦、さらに修正といった方法論により、検証・論証して結論を導いていく、これこそが、大学院生として皆さんがこれから獲得すべき「学問の作法」になります。
長い時間軸の中で考えると、世の中で行われている研究なるものはいつの時代も過渡的、一時的なものであるわけです。ですから、自身で設定する研究テーマを中心に、これから後の社会がどのように進んでいくのかを含め、自分なりの仮説を立てて教員や仲間と議論をしてください。それが次の自分の一歩を決める材料となり、原動力となります。見つけた疑問に対しては、まずは異を唱え、共に歩む仲間の院生と意見を戦わせてください。新しい時代は、先輩達が立てた仮説や、先輩たちが導き出した結論がいつまでも正しいとは限りません。中には賞味期限切れを起こしているものもあると思います。皆さんには、先を見通す洞察力を高め、仲間を増やし、影響力を持って正しいビジョンを広められる社会のリーダーになって頂きたい。できるならば、社会の閉塞感を打ち破り、社会全体の活動の盛り上がりを期待できる研究にその成果を出して欲しい。それが院生になられた皆さんへの私共の願いです。
大学院での皆さんの研究は独自性・独創性が求められる分、重荷や苦労が伴い、ややもすると孤独に陥りがちです。しかし、覚えておいて欲しいのは、皆さんはこの大学院では決して一人ではないということです。平日の夜間や土曜の研究や実習等は大変だろうと思いますが、私共大学院で濃密な時間と空間を共有し、教員や仲間と切磋琢磨し、社会をより良い方向に導く力強いリーダーになって頂くよう、切に願いします。皆さんの研究が進み、夢が叶い、希望が実現できるようお手伝いするために私共は控えています。
最後に一つ、意識して欲しいことがあります。本日のこの入学式の形式を見てもお分かりのように、本学は建学の精神をキリスト教に置いています。もとより、皆さんは一個の独立した人間として、当然のことながらキリスト教の信仰を強制されることはありません。しかし、これまでキリスト教に馴染みが薄かったとしても、本学大学院に在籍するのですから、本学の建学の理念に深く関わるキリスト教の本質についての、基本的な理解は身に付けていただきたいと思います。
皆さんの本学での研究が、充実し、実り多いものにならんことを、また本学での研鑽が、東洋英和の先輩たちがそうであったように、皆さんの今後の人生を支える力強いバックボーンとなることを期待し、私の式辞といたします。
ようこそ東洋英和女学院大学大学院へ。東洋英和の一員になられる皆さんを心から歓迎いたします。
2023年4月1日
東洋英和女学院大学 大学院 学長 星野三喜夫