2022年度3月期学位授与式式辞
2023年3月18日(土)、2022年度3月期大学院学位授与式を行いました。
人間科学研究科修士課程19名、国際協力研究科修士課程3名に授与いたしました。
星野学長の式辞です。
東洋英和女学院大学大学院 学位授与式式辞
東洋英和女学院大学大学院修了の皆さん、修了おめでとうございます。教職員一同、心からお祝い申し上げます。また、皆さんの大学院生活を力強く支えてくださったご家族、そして関係者の皆様にも心から祝意を申し上げたいと思います。
新型ウイルス感染症のために大学の行事はこの3年間、何かと制約を受けてきましたが、本日、この学位授与式を、マスク着用は個人の判断に委ねることにして開催する運びとなりました。もちろん感染防止を施した中ではありますが、このような中、晴れて、修了生とその関係者の皆さん、教職員とで、厳かにお祝いできますことを、大学院を代表し、お慶び申し上げます。
修了生の皆さんは、それぞれ異なったバックグラウンドの下、強い意思と志をもって東洋英和女学院大学大学院を選ばれて入学し、勉学と研究に励み、所定の課程を修了し、また修士論文と口頭試問をパスし、本日ここに、めでたく修士号の学位授与の日を迎えられました。
皆さんの大学院での研鑽の日々には、いろいろなことがあったことは想像に難くありません。コロナ禍という事態の中で、良いことばかりではなかったかも知れませんが、楽しかったこと、嬉しかったこと、達成感を味わったことなども沢山あったと思います。また、今日の充実した喜びの日を迎えるまでには、仕事と学問の両立を含め、並々ならぬご苦労があったことと思います。そのご努力と獲得された成果に対し、深い敬意を表するものです。
さて、大学院修了は、大学の学部卒業と並んで人生における大きな節目の一つであるわけです。皆さんは今日、高等教育の最終段階に位置する大学院修了の学位記を手にされました。皆さんがこれから書く履歴書には、東洋英和女学院大学大学院修士課程を修了し、人間科学、ないし社会科学の修士の学位を取得したという新しい項目が加わります。皆さんは私共東洋英和の建学の精神である「敬神奉仕」の理念の下、本大学院で高度な専門職としての訓練を受け、研鑽を重ね、それが評価されて学位を授与されたわけです。どうか、東洋英和女学院大学大学院の修了生であることに誇りを持ち、本学で研究された成果や、身に付けた研究手法を基礎とし、また出発点として、現実社会が直面している困難さ、複雑さにこれからも真正面が立ち向かっていくべく、一層の研鑽を重ねていっていただきたいと思います。
さて、私たちは先が見通せず、また変化の激しい経済社会環境の中に生きています。進化論の提唱者ダーウィンは、次の言葉を残しています。「最も強い者が生き残るのではなく、また最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化する者である。」"It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change."。これはつまり、環境の変化に対応できる者だけが生き残れる、ということです。2020年以降新型コロナ感染症は3年続きました。ようやくこの5月から感染症法上の分類がこれまでの2類から5類に変更されます。ウイルスが無くなるわけではありませんが、一つの大きな節目に入ります。コロナ禍は社会の構造変革を起こしてきました。諸々の心象風景が、まさに「動」から「静」へ180度パラダイムシフトが起こりました。そのような中で、昨年1年間を振り返ってみても、2月にロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まり、国際秩序を大きく揺るがしました。1年経った今でも、この先がどうなるか見通せません。その影響と言われているインフレ、物価高の進行が世界経済を大混乱に陥れ、日本を含む世界各国・地域に影響を与えています。日本を取り巻く東アジアや世界の各地域では地政学的なリスクがかつてないほど高まっています。昨年10月には中国の共産党大会で習近平氏の三期目が決まり、今後一層の権力の集中と同国の強国化路線が進むだろうこと、また米国では11月に中間選挙が行われ、共和党・民主党のねじれが確定し、米国内の分断がこの先さらに大きくなるだろうことが予想されます。日本は、中国の人権問題や尖閣諸島周辺を含む領有権拡張の動き、また北朝鮮の核開発とミサイル発射などが続く中で2023年の3か月が過ぎようとしています。そのような国際秩序の変容と政治経済の不安定化という環境変化の大波が押し寄せている中で、経済社会を構成する人間として、環境の変容に適応し生き残るためにわれわれ自身、変化をしなければなりません。この環境変容に気付き、自分としてどう考え、どう行動するか、考えを巡らせなければならない時に、このチャールズ・ダーウィンの「変化をしないと生き残れない」という言葉を肝に銘じていきたいと思います。
本学では、修了生に対して、学位記とともに黄色い水仙(黄水仙)の花をお贈りすることにしています。これは東洋英和女学院の慣行で、その起源は戦前まで遡ります。黄水仙の花ことばは「愛に応える」です。黄水仙の花の一輪一輪に込められた「敬神奉仕」の建学の精神とスクールモットーを、皆さんはどうか忘れないで頂きたいと思います。それこそが、増々複雑化する世界に向かって船を漕ぎ出さんとする修了生の力強い支えと追い風になってくれるに違いありません。
さて、そろそろ式辞を締めくくりたいと思います。この間、東洋英和女学院大学と修了生の皆さんを支え続けて下さいました、地域の皆様、並びに関係各位に対しまして、重ねて、心より御礼申し上げます。皆さん、どうぞ、東洋英和女学院大学大学院の修了生であるということに胸を張り、大学院での研鑽を通じて自身の成長や仲間の広がりをいま一度しっかり確認し、自信を持って東洋英和女学院大学大学院で育てた大きな両の翼で空高く舞い、羽ばたいて下さい。
皆さんの未来が前途洋々で、明るく、限りなく広がることを心より信じ、また祈念して、私の式辞といたします。修了生の皆さん、改めて修了、まことにおめでとうございます。Wish you the best of luck in your future. 皆さんの未来に栄光があれんことを。
2023年3月18日 東洋英和女学院大学大学院 学長 星野三喜夫