2022年度前期大学院入学式式辞
2022年4月2日(土)に大学院入学式を行いました。
修士課程31名が新たに本大学院で研究生活に入ります。
星野新学長の式辞をお届けいたします。
東洋英和女学院大学大学院 入学式式辞(2022年4月2日)
東洋英和女学院大学大学院に入学された皆さん、この度はご入学、誠におめでとうございます。教職員一同、皆さんのご入学を心から歓迎いたします。
新型ウイルス感染症が広がり、イベント開催の自粛が進むなかで、本日、ここに大学院入学式をめでたく、マスクを着用し感染防止を施した中ではありますが、新入の院生の皆さんとお祝いできますことに、大学院を代表して祝意を申し上げます。皆さんにとっては、将来、今日という日を振り返る時、感染対策をしっかり施した入学式は、思い出に残るものになろうかと思います。新型ウイルス感染症は未だ収まっていませんが、明けない夜はありません。人間の英知により、この災禍が近い将来、必ずや克服されるものと信じております。
皆さんは、職場や家庭において社会人としての責任を果たしながら、さらに大学院において専門的な知見の獲得と学問的な研鑽を積まれようと決意をされて、この大学院の門をくぐられたと想像しております。皆さんはこれから、いわば二足の草鞋を履くわけですが、そのことの大変さは十分に想定されておられるでしょうし、ご自身の覚悟と周囲の励ましとがあればこそ、敢えてこの道を選ばれたのだと確信しております。その志に対して心よりの敬意を表したいと思います。
私共のこの大学院の母胎である東洋英和女学院は、1884年の創設ですから、今年は創立138年目に当たります。大学院は東洋英和グループの中では最も新しいメンバーで、大学本体の開学より4年遅れて1993年に出発いたしました。爾来、人間科学研究科と国際協力研究科の2つの研究科を併せますと、今日に至るまで累計で900名を優に超えるそれぞれの研究領域の修士号あるいは博士号の学位を授与し、学院の建学理念である「敬神奉仕」をそれぞれの領域において具体的に実践する有為の人材を輩出してきました。
さて、2020年以降のコロナ禍の日々は、まさに、真逆の世界がやって来た感があります。個人的な心象風景も、まさに「動」から「静」へ、180度パラダイムシフトが起こりました。そのような中、皆さんは本学大学院に入学されました。世界が目まぐるしく変動を続け、先行きが見通せない時代にあって、皆さんにはぜひ「新しい時代を見極める目」というものを養って欲しいと思います。大学院の課程において皆さんに求められるのは、徹底的に「詰めて考える」という作業に他なりません。考えるべき問題や課題を特定し、それがなぜ起きているかについて自分なりに仮説を立て、それが正しいかどうかを、一定の方法論で確認し、検証・論証して結論を導いていく、それが、皆さんがこれから獲得すべき「学問の作法」であります。
どの専攻、どの研究領域においても言えることですが、世の中の研究成果はまだまだ過渡期にあり、絶えず変化しています。自身の研究領域を中心に、これから社会がどのように進んでいくのか、自分なりの仮説を立ててみてください。その仮説は、次の自分の一歩を決める材料となります。そして、その仮説を、仲間と議論しながら見定めていって欲しいと思います。見つけた疑問に対しては、「ちょっと、待って」「これ、おかしいよね」とまずは異を唱え、共に歩む仲間の院生と議論を戦わせてください。それが皆さんのこれからの研究において大きな原動力になります。決して、先輩達が言うことを鵜呑みにしないことです。新しい時代は、先達が立てた仮説や、先輩たちが導き出した結論がいつまでも正しいとは限りません。今のうちにビジョンを作り、仲間を増やし、願わくば、皆さんには、影響力を持って正しいビジョンを広められる社会のリーダーになって欲しいと願っております。
最後に一つ触れておきたいことがあります。本日の、この入学式の形式を見てもお分かりの通り、本学は建学の精神をキリスト教に置いています。もとより、皆さんは一個の独立した社会人でありますので、当然ながらキリスト教の信仰を強制されることはありません。しかし、これまでキリスト教に馴染みが薄かったとしても、本学大学院に在籍する以上、本学の建学の理念に深く関わるキリスト教の本質についての、基本的な理解は身に付けていただきたいと願っています。その本質を表す主イエス・キリストの言葉の一つに次のようなものがあります。「すべて重荷を負うて苦労しているものは、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。」(マタイによる福音書11章28~30節)。大学院での皆さんの研究は独自性・独創性が求められる分、二足の草鞋を履くことの重荷や苦労が伴い、ややもすると孤独に陥りがちです。しかし皆さんはこの大学院では決して一人ではありません。社会人生活と研究生活の二足の草鞋を履くのは本当に大変だろうと思いますが、私共大学院で濃密な時間と空間を共有し、教員や仲間と切磋琢磨し、社会をより良い方向に導く力強いリーダーになって頂くよう、切に願いします。皆さんの研究が進み、夢が叶い、希望が実現できるように、私共はあらゆる角度からお手伝いをします。
皆さんの本学での研究が、充実し、実り多いものになることを、また本学での研鑽が、東洋英和の先達たちがそうであったように、皆さんの今後の人生を支える力強いバックボーンとなりますようお祈りし、私の式辞といたします。
本日は、東洋英和女学院大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。
2022年4月2日
東洋英和女学院大学 大学院
学長 星野三喜夫