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2019年度後期入学式 学長式辞

 何よりもまず、本学大学院人間科学研究科への御入学おめでとうございます。また、これまで貴方を見守ってこられたご家族をはじめ、ご関係の皆様のこれまでのお支えに対しまして心より敬意を表し、革めてお慶び申し上げます。御承知のように、この大学院は社会人対象の夜間大学院であります。貴方は、職場や家庭において社会人としての責任を果たしながら、さらに大学院において専門的な知見の獲得と学問的な研鑽を積まれようと決意されて、この場に臨んでおられるのでしょう。何よりも、その志に対して衷心からの敬意を表したいと思います。

来賓の皆様には、ご多用の中、御参列いただきまして誠にありがとうございます。

さて、貴方のご入学は、ご自身やご家族にとっての慶びであるばかりではなく、本学にとっても大きな慶びであります。ご案内のように、この東洋英和女学院は今年で創立から135年目、4年制大学が開学して30年目という節目の年を迎えました。大学院が発足したのは開学から4年後ですから、すでに四半世紀の歴史を刻んできたことになります。この四半世紀の歴史を後世に引き継いでいただく新入生をまた一人、迎えることができたということは、本学の教職員にとりましても、また大学院同窓会にとりましても、これほどの慶びはありません。それは、先ほど読み上げられた聖書の箇所に基づく、東洋英和の建学の理念、「敬神奉仕」というスクールモットーに触れる人間が新たに加わることを意味するからです。私どもは、この「敬神奉仕」という四文字は、キリスト者であろうがなかろうが、誰もが人生の指針として掲げていくに値する英知の言葉だと信じております。自分の中に揺らぎのない価値観や規範意識を確立し、助けを求める他者の声に敏感に応答する感受性を持て、ということなのですから。現代風に解釈するとそれは、「ぶれない頭とやわらかな心」ということになりましょうか。大事なことは、「ぶれない頭」と「やわらかな心」とはワンセットであって、どちらか一方だけでは成り立たないという事実です。この言葉に酷似した言い回しがあります。「冷静な頭脳と温かい心」すなわち、クールヘッド&ワームハートというものです。これは、近代経済学の祖ともいわれるアルフレッド・マーシャルが英国のケンブリッジ大学での教授就任記念講演で述べた言葉です。少々長くなりますが引用しますと、「強い人間の偉大な母であるケンブリッジが世界に送り出す者は、冷ややかな頭脳と温かい心をもって、自らの周囲の社会的苦悩と戦うために、その最善の力の、少なくとも幾分でも喜んでささげ、また教養ある高尚な生活のための物質的手段を、すべての人々に分かち与えることがどの程度にまでできるのかを明らかにするため、自らの全能力を尽くすまでは、安心・満足しないと決意した人々なのである」。

このクールヘッド&ワームハートは、いまでは教育や福祉に携わる人々の人口によく膾炙する標語のようになっていると聞き及びますが、私どもにはマーシャルの講演内容のケンブリッジを東洋英和に置き換えても何ら違和感がないように思えます。それはまさにこの学院の建学の理念、心構えを表していると考えられるからです。

このような主体的な心構えの上に、これからの大学院生活を展開していっていただきたい。私ども教職員は、貴方のその努力に、可能な限り寄り添い、全力で支えていくつもりです。革めて、本学へようこそ。東洋英和女学院大学大学院は、貴方の入学を心から歓迎いたします。

2019914

東洋英和女学院大学

学長 池田明史

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