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2019年度9月期学位授与式 式辞

 修士号あるいは学士号を授与されて、本日ここに晴れて修了および卒業される皆さん、おめでとうございます。皆さんの在学中のご努力に対し、衷心より敬意を表したいと思います。ご家族の方々もさぞお喜びのことと拝察いたします。また御来賓の皆様には、ご多忙のなかをご参列いただき、こころから感謝申し上げます。

 さて、人生百年時代と呼ばれる現在、皆さんはそのうちの数年をこの東洋英和で学生や院生として過ごされたことになります。後から振り返れば、あっという間の出来事だったと思われることになるかもしれません。例えてみれば、港に入港して航海に必要な装備や物資を積み込んでいる日々だったということでしょう。修士の皆さんは、前の港からいったん社会という外海に出て、そしてこの港に入り、次の航海に備えていたのです。新卒の学士の皆さんは、これまでの穏やかな内水面の海から、はじめて外海に乗り出そうとしています。国際情勢が混沌とし、国内社会も先行きが見通せないという外海です。皆さんがいままさに乗り出そうとしている先は、Turbulent Water すなわち荒ぶる海なのです。

 しかしながら、そのように怒涛逆巻く嵐の海に船出する皆さんには、その航海に堪えるだけの訓練がなされており、船には航海に必要な機材が積み込まれているということを信じていただきたいと思います。修士や学士という学位は、そのことの証にほかなりません。みなさんは、それぞれの学位にふさわしい羅針盤(コンパス)とそれを操作する能力を身に付けたはずなのです。装置の機能と、訓練の成果に自信を持って、荒ぶる海を乗り越えて行っていただきたいと切に願います。それは、一言で言えば「自分のアタマで考える」ということです。考えるべき問題を特定し、それがなぜ起きているかについて自分なりに仮説を立て、それが正しいかどうかを、何らかの方法で確認、つまり検証して結論を導いていく。それこそが、皆さんが身に付けた「学問の作法」であります。

 冷戦の対立が終わったから平和と繁栄の時代がやってくるとか、人類の進歩と調和などといった他力本願的あるいは予定調和的な妄想がほぼすべて吹き飛んでしまったこの時代に、怒涛のように襲ってくる困難や問題に、ただやみくもに突っ込んだり逃げたりするのではなく、自分のアタマで考えて適切に舵を切り、フネを無事に、しかし前に、進めていってください。

 万国旗流信号、international maritime signal flags と呼ばれるものがありまして、海や船の世界では、いくつかの旗を組み合わせて意思疎通を図る一つの手段として今でも通用しております。そのうちで、アルファベットのUWをそれぞれ表す旗を一緒に掲げると、「ご安航を祈る(貴船の航海の安全・無事を祈る)」という意味になります。フネが港を出ていくとき、あるいは広い海原のなかでたまたまほかの船とすれ違うなどしたとき、このUW旗を掲げて出港する船や相手の船を見送る挨拶を送るわけです。私どももいま、皆さんを送り出すにあたり、UWの旗を高く掲げたいと思います。人生という大海原での皆さんの航海が安全で無事なものでありますように祈ります。

最後になりますが、学位記とともに、皆さんのお一人おひとりにピンクのバラの花をお贈りしようと思います。例年3月の学位授与式においては黄色い水仙の花が贈られておりますが、季節が季節でありますのでこれに替えてバラの花にいたしました。その花言葉には「上品」「気品」「輝かしい」などいろいろあるようですが、この場の皆さんにもっともふさわしいのは、「誇り」であろうと思います。本学で皆さんというフネに羅針盤が積み込まれたのだという事実に、誇りを持っていただきたい。そしてその羅針盤が指し示している方向は、キリスト教学校である東洋英和のスクールモットー、すなわち「敬神奉仕」という四文字でなければなりません。みなさんの航海の無事を祈りつつ、これを以て私の式辞といたします。

2019914日 

東洋英和女学院大学

学長 池田明史

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