2018年度後期入学式 学長式辞
東洋英和女学院大学の大学院に進学された皆さん、このたびは誠におめでとうございます。ご家族並びに御来賓の皆様には、ご多用の中、御臨席賜りましたことを厚く御礼申し上げます。
さて、この大学院の母胎である東洋英和女学院は、1884年の創設ですから、来年で135年目に当たります。大学院は英和ファミリーのなかでは最も新しいメンバーで、大学本体の開学より四年遅れて1993年に出発いたしました。今年で開設から25年、四半世紀の節目を迎えたことになります。爾来、二つの研究科を併せますと今日に至るまで累計で八百名を優に越える学術修士および学術博士の学位を授与し、学院の建学理念である「敬神奉仕」をそれぞれの領域において具体的に実践する有為の人材を輩出してきたという自負を持っているところです。そして、皆さんにはすでにご案内の通り、この大学院は社会人対象の夜間大学院であります。その特色の第一は、さまざまな年齢層やキャリアの異なる人々に「開かれている」という点にあります。大学本体は女子大であるにも拘らず、大学院は男性にも開かれているという事実が、そのような特色を象徴していると言えるかもしれません。
そしてそのことは直ちに、第二の特色につながって参ります。すなわちそれらのバラエティに富む院生の皆さんがそれぞれの現場で培った特定の知見やノウハウは、時として「教える」側と「教えられる」側の立場を逆転させる場合もあり得るということにほかなりません。教員はそこで、「教える」ことが実は「学ぶ」ことでもあるというスリリングな体験をするわけですし、院生もまた「学ぶ」ことと「教える」こととが同じコインの裏表という関係にあるという大きな刺激を受けるに違いありません。
私は実は、このような双方向性こそが、現在の日本社会に求められている高度の専門職業技能を育む基盤になるのではないかと考えております。皆さんはこれから、主体的にリサーチ・クエッションを設定し、粘り強く試行錯誤を続けて仮説を構築し、これを検証して新たな知見を創造するという知的営為を求められることになります。申し上げるまでもなく、リサーチ・クエッションとはすなわち、研究テーマであり、探求すべき学問上の課題にほかなりません。ここに晴れて本学大学院生としてお迎えする皆さんに私が最初に申し上げたいのは、研究対象に対して傍観者であってはならないということです。「それがなくては生きていけない」というぐらいに、自分の立場や価値観と切り離せないような研究テーマを選ばなければなりません。学問上の課題を自分自身の問題意識と結びつけ、当事者意識を持ちながら、前に進んでいっていただきたいと切に望みます。
皆さんは、職場や家庭において社会人としての責任を果たしながら、さらに大学院での研鑽を積まれようと決意されて、この場に臨んでおられるのでしょう。何よりも、その志に対して心よりの敬意を表したいと思います。
皆さん、東洋英和女学院大学大学院にようこそ。私どもは皆さんの御入学を心から嬉しく思っております。社会人生活と研究生活という二足の草鞋を履くのは本当にご苦労だろうと思いますが、成果を挙げてこの大学院を去られるときに「本当に良かった」という達成感を手にすることができますよう、心から祈念して、私の式辞といたします。
2018年9月15日
東洋英和女学院大学 学長
池田明史