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2025年度前期入学式式辞

2025年4月5日(土)に前期入学式を行いました。

星野学長の式辞です。

 東洋英和女学院大学大学院に入学された 31 人の院生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。ご家族、ご親族、そして関係者の方々、新院生のご入学を教職員一同心からお祝いし、歓迎いたします。本日、院生となられた皆さんを、こうして大学院の教職員が列席して、厳かに入学式を挙行し、お祝いできますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。

  大学院は大学の学部に次ぐ、社会が用意する高等教育の最終段階に位置しています。人生  のすべての時間を通して、人は学びを止めることはありませんが、用意され、準備された環  境のなかで、教員や職員の手厚い支援の下で学ぶ機会は、これからの人生において極めて貴  重なものになるに違いありません。一方で、大学院がキャリア形成上の単なる通過点だ、という風に考えて欲しくないとも思います。本学は、高度専門職業教育をめざす社会人養成の 大学院と称していますが、皆さんの中にはいろいろなバックグラウンドの方々がいらっしゃるでしょう。学部を卒業しそのまま大学院に来られたストレートマスターもいらっしゃ  るでしょうし、あるいは、職場において大きな職責を果たされながら、さらに大学院において専門的な知見の獲得と学問的な研鑽を積まれようと決意をされて、この大学院の門をくぐられた方もいらっしゃると思います。そのような方はいわば二足の草鞋を履くわけですが、そのことの大変さは十分に想定されておられるでしょうし、ご自身の覚悟と周囲の励ましとがあればこそ、敢えてその道を選ばれたのだと確信しております。いずれにしましても、皆さんの強い意志と高い志に対して敬意を表したいと思います。

  私ども大学院の母体である学校法人東洋英和女学院は 1884 年の創立で、昨年の 2024 11 月に創立 140 周年を祝いました。大学院は東洋英和の中では最も新しい部門で、4 年制大学として大学が開学した 1989 年の 4 年後の 1993 年にスタートしました。従って、今年、大学院は開設 32 周年に当たります。人間科学研究科と国際協力研究科の 2 つの研究科を併せますと、今日に至るまで、累計で 1,000 本を超える修士論文や博士論文、研究成果が収められ、修士号あるいは博士号の学位を授与して、学院の建学の精神である「敬神奉仕」をそれぞれの領域で実践している有為な人材を広く社会に輩出してきました。

 さて、我々の社会は、現在、多くの問題や課題が山積しています。この地球上では残念ながら今この瞬間も悲惨な戦闘や戦争が続いています。国内外で分断が深まり、気候変動は今後さらに増加していくでしょう。学問や技術がどんなに進歩しても、問題は解決するどころか、むしろ増えているというのが現状です。特に、2020 年の新型コロナウイルス禍以降、社会の不安定性が増しているように思います。例えば、これまで金科玉条のように尊重し、大切にしてきたポリティカル・コレクトネス、いわゆる政治的正しさや、多様性・公平性・包摂性の DEILGBT に対する社会の監視の目が強まり、私たちそれぞれが大切にして守ってきた文化や価値観、世界観をこれらが変えたり、壊してしまっており、またそれへの反発も生まれています。このような混沌として不確実で、課題が多い時代だからこそ、飛び交う情報を取捨選択し、精査して、個人レベル、あるいは所属している組織レベルで何をすべきか、何ができるかを真剣に考えてみる時です。その際の拠り所となることの一つが、隣人を愛し人に仕える本学院の「敬神奉仕」の建学の精神なのだと思います。

  このように、国際秩序の変容と政治経済社会の不安定化が進む環境変化の中で、皆さんは本学大学院に入学されたわけです。これから、研究者や高度専門職を目指して歩まれる皆さんには、世界が目まぐるしく変化し続け、先行きが見通せない状況にあるからこその、「新しい時代を見極める目」を養う必要があります。大学院は知識や情報の伝達、意見交換、あるいは指導・指示を受けるだけの場でないことは皆さん、良く認識されていることと思います。大学院の課程において皆さんに求められるのは、「問い」を立て、徹底的に「考える」ということ、つまり「問を立て、付き詰めて、論理的に思考をする」という作業です。皆さんがこれから指導教員のもと、どのような研究テーマを選ばれるにせよ、対象となる問題や課題を設定し、それがなぜ起きているかの「なぜ」という「問い」に対して、自分なりに仮説を立て、挑戦と失敗、修正、再挑戦、さらに修正といった方法論により、検証・論証をして結論を導いていく、これこそが、大学院生として皆さんがこれから目指すべき「学問の手法」になります。

  ややもすると、論点や結論を早く出したい、一刻も早く論文を完成させたい、と思いがちです。そして、論点はこう、結論はこう、と思い込んでしまいます。しかし、そこに至るや、歩みは止まります。一つの答えに腰を下ろすことは、それ以外の答えを排除し、論文の中身を狭く、閉ざしてしまいます。答えるのではなく、むしろ「問う」ことを続けてください。導き出した答えは、本当だろうか、そうではないのではないか、と「問う」時、さらに別の論点や答えに出会えます。大事なことは、何が真実なのかを問い続けることです。本学院で調査研究をする院生達には、物事を見る眼を持ち、問い、尋ね続ける姿勢を身に付けることを願っています。それこそが、あらゆるデータや情報の中で本当のものを見つけ、実を結ばせる「学問の手法」です。

  大学の学部生とは異なり、院生の皆さんの調査研究はさらに高いレベルで独自性・独創性が求められることは言うに及びません。そして、その分大きな負荷がかかり、時には孤独に陥りがちです。しかし、忘れないでいて欲しいのは、皆さんはこの大学院では一人ではない、ということです。平日の夜間や土曜の調査研究や実習等は大変でしょうが、私ども大学院で濃密な時間と空間を共有し、教員や院生の仲間達とそれぞれが培ってきた知識や経験を交 流させながら知の結晶を紡いで、社会を力強く支え、導くリーダーになって頂くこと、これが私たち教職員の願いです。皆さんの研究が進み、夢が叶い、希望が実現できるようお手伝いするために私共はここに控えている、ということを常に覚えておいてください。

  皆さんの本学での研究が、充実し、実り多いものにならんことを、また本学での研鑽が、東洋英和の先輩たちがそうであったように、皆さんの今後の人生を支える力強いバックボーンとなることを期待し、私の式辞といたします。ようこそ東洋英和女学院大学大学院へ。東洋英和の一員になられた皆さんを心から歓迎いたします。

 2025 4 5

東洋英和女学院大学 大学院学長 星野 三喜夫

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