2024年度前期大学院入学式を挙行いたしました
2024年度前期大学院入学式を4月6日(土)に挙行し、人間科学研究科23名、国際協力研究科7名の新入生をお迎えいたしました。
星野 三喜夫学長の式辞をお届けいたします。
東洋英和女学院大学大学院 入学式式辞(2024年4月6日)
東洋英和女学院大学大学院に入学された院生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。ご家族、ご親族、そして関係者の方々、新院生のご入学を教職員一同心からお祝いし、歓迎いたします。本日、院生となられた皆さんを、こうして大学院の教職員が列席して、厳かに入学式を挙行し、お祝いできますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
大学院は大学学部に次ぐ、高等教育の最終段階に位置しています。本学は、高度専門職業教育をめざす社会人養成の大学院ですが、皆さんの中にはいろいろなバックグラウンドの方々がいらっしゃると思います。学部を卒業しそのまま大学院に来られたストレートマスターもいらっしゃるでしょうし、あるいは、職場において大きな責任を果たされながら、さらに大学院において専門的な知見の獲得と学問的な研鑽を積まれようと決意をされて、この大学院の門をくぐられた方もいらっしゃると思います。そのような方はいわば二足の草鞋を履くわけですが、そのことの大変さは十分に想定されておられるでしょうし、ご自身の覚悟と周囲の励ましとがあればこそ、敢えてその道を選ばれたのだと確信しております。いずれにしましても、皆さんの強い意志と高い志に対して敬意を表したいと思います。
私共大学院の母体である学校法人東洋英和女学院は1884年の創立で、今年は記念すべき創立140周年に当たります。大学院は東洋英和のグループの中では最も新しい部門で、4年制大学として大学が開学した1989年の4年後の1993年にスタートいたしました。今年、大学院は開学31年に当たります。人間科学研究科と国際協力研究科の2つの研究科を併せますと、今日に至るまで累計で約1,000本の修士論文や博士論文、研究成果が収められ、修士号あるいは博士号の学位を授与して、学院の建学の理念である「敬神奉仕」をそれぞれの領域で実践している有為な人材を広く社会に輩出してきました。
さて、2020年以降3年続いた新型コロナ感染症は、峠を越えて大学院においてもほぼ平常を取り戻しております。ウイルスが周りからいなくなったわけではありませんので、油断はできませんが、大きな節目を迎えたのは確かです。コロナは予期せぬ、望まない災禍ではありましたが、しかし、私共の大学院でもオンライン教育を整備し活用するなどして対応してきましたし、新たな教育環境の構築が、一時的、付加的なものではなく、発展的に取り組むべき課題であることを私たちに強く認識させてくれています。3年も続いた新型コロナウィルス禍は、社会のあらゆる面で閉塞感を引き起こしてきましたが、そのような中にあっても、現実の政治経済社会は、私共の目に見える、見えないに関係なく、大きく、しかし確実に変化、変容してきています。世界に目を向ければ、戦後、長い議論を経て反戦・平和への強い願いが世界全体で共有されてきた筈であるにも拘わらず、ウクライナへのロシア進攻は3年目に突入し、イスラム過激派ハマスによるイスラエル侵略とその後の軍事衝突などにより世界情勢が緊迫し、万の単位で犠牲者が出ています。この状態を国連の安全保障理事会は止めることが出来ず、未だ先行きがまったく見えない状況にあります。日本は隣国にロシア、中国、北朝鮮という専制国家を抱え、日本の長い歴史の中でも最も危機的な時代にありますが、しかし国内では内向きな、政治資金を巡る問題が政界を大きく揺るがして、世界の緊迫した情勢に関心が示されることなく今日に至っています。このような混沌として不確実で課題が多い時代だからこそ、飛び交う情報を取捨選択し、精査して、個人レベル、あるいは所属している組織で何をすべきか、何ができるかを真剣に考えてみる時です。その際に拠り所となることの一つが、隣人を愛し仕える本学院の「敬神奉仕」の建学の精神なのだと思います。
国際秩序の変容と政治経済社会の不安定という環境変化の大波が押し寄せている中、皆さんは本学大学院に入学されたわけです。これから、研究者や高度専門職を目指して歩まれる皆さんには、世界が目まぐるしく変化し続け、先行きが見通せない状況にあるからこその、「新しい時代を見極める目」を養う必要があります。大学院は知識や情報の伝達、意見交換、あるいは指導・指示を受けるだけの場でないことは皆さん、良く認識されていると思います。大学院の課程において皆さんに求められるのは、徹底的に「考え抜く」ということ、つまり「付き詰めて、論理的に思考をする」という作業です。皆さんがこれから指導教員のもと、どのような研究テーマを選ばれるにせよ、対象となる問題や課題を設定し、それがなぜ起きているかの「なぜ」について、自分なりに仮説を立て、挑戦と失敗、修正と再挑戦、さらに修正といった方法論により、検証・論証して結論を導いていく、これこそが、大学院生として皆さんがこれから目指すべき「学問の作法」になります。
世の中で行われている研究やその成果物は、長いスパンで考えると過渡的、一時的なものです。未来永劫ではありません。皆さんは、自身で設定する研究テーマにおいて、これからの社会がどのように進んでいくのかを含め、自分なりの仮説を立てて教員や仲間とおおいに議論をしてください。先輩達が纏めた成果を参照し、吸収しつつ、自身の研究、考察、実習、フィールドワークにより論文を結実させ、次に続く後輩達に知のバトンを渡してください。研究や論考の中で見つけた疑問に対しては、まずは異を唱え、共に歩む仲間の院生と意見を戦わせてください。先輩達が立てた仮説や、先輩たちが導き出した結論がいつまでも正しいとは限りません。中には賞味期限切れを起こしているものもあると思います。先を見通す洞察力を高め、仲間を増やし、影響力を持って正しいビジョンを広められる社会のリーダーになって頂きたい。できるならば、社会の閉塞状況を打ち破り、社会全体の活動の盛り上がりを期待できる研究にその成果を出して欲しい。それが本学の院生になられた皆さんへの私共の願いです。
院生の皆さんには、大学の学部と異なり、その研究は独自性・独創性が求められます。従って、その分、負荷がかかり、時には孤独に陥りがちです。しかし、ぜひ覚えておいて欲しいのは、皆さんはこの大学院では一人ではないということです。平日の夜間や土曜の研究や実習等は大変でしょうが、私共大学院で濃密な時間と空間を共有し、教員や仲間とそれぞれが培ってきた知識や経験を交流させながら知の結晶を紡いで、社会を力強く導くリーダーになって頂くよう、切に願いします。皆さんの研究が進み、夢が叶い、希望が実現できるようお手伝いするために私共はここに控えている、ということを常に覚えておいてください。
皆さんの本学での研究が、充実し、実り多いものにならんことを、また本学での研鑽が、東洋英和の先輩たちがそうであったように、皆さんの今後の人生を支える力強いバックボーンとなることを期待し、私の式辞といたします。ようこそ東洋英和女学院大学大学院へ。東洋英和の一員になられた皆さんを心から歓迎いたします。
2024年4月6日
東洋英和女学院大学 大学院
学長 星野三喜夫