タイトル画像:NEWS

NEWS

2026年03月12日:お知らせ

【開催報告】トークイベント「ロシア・ウクライナ戦争とヨーロッパの戦略的自立」

2026年38日(日)、紀伊國屋書店新宿本店3階アカデミック・ラウンジにて、本学社会連携センター主催のトークイベントの第3回を開催いたしました。

本イベントでは、本学大学院国際協力研究科長の河野毅教授が司会を務め、対談には、ヨーロッパ・EU政治専門の本学小久保康之教授、欧州安全保障研究第一人者の防衛大学校・広瀬佳一教授が登壇しました。

河野教授は冒頭、ウクライナ侵攻開始から4年経過した現在も、領土の約2割がロシア占領下にあり、国内外に1300万人以上の避難民を抱える過酷な現状を提示。このような重いテーマを扱う意義を強調しつつ、西側諸国の「支援疲れ」という喫緊の課題を提示し、専門的見地から議論が交わされました。

EUの変容と戦略的自立
小久保教授は、EU(欧州連合)が経済統合体から、自ら安全保障を担う「軍事的主体」へと劇的変貌を遂げつつある現状を分析。EUは2016年より、重要分野で他国に過度に依存しない「戦略的自立」を目指してきたが、ウクライナ戦争でその流れが加速したと指摘。ウクライナ支援はEU・ヨーロッパ諸国と米国で約半々ずつ負担してきたが、2025年より、年間1000億ユーロ(約18兆円)規模の「欧州防衛産業支援枠(SAFE)」を本格始動させるなど、米国への軍事的依存を低減させて、一層の「戦略的自立」を目指していると解説。一方、ロシアに近い北欧・バルト・東欧諸国と、遠くの南欧・西欧諸国には「熱量差」があるとも言及。

ウクライナのEU加盟問題については、2027年が目標として掲げられているが、正式加盟ではない「準加盟」地位の創設や、単一市場のみへの先行参加などが現地で検討されていると紹介。ウクライナ国民が「EUの門前で待たされ続ける」ことによる絶望を防ぎ、欧州の一員としての希望を繋ぎ止めるための高度な政治的戦略が必要とされており、正規の加盟交渉手続より、地政学的判断が優先される可能性があると分析。

2026031203.JPG

NATOの回帰とトランプ・リスク
広瀬教授は、国際安全保障の力学、特にNATO(北大西洋条約機構)と米国の動向について説明。冷戦後のNATOが重視してきた「協調的安全保障」が崩壊し、主権国家を直接守る「集団防衛」へと先祖返りした現状を指摘、第二次トランプ政権誕生がもたらした「支援のビジネス化」の衝撃的構造変化を詳述しました。

具体的には、米国が直接的軍事援助を停止する一方で導入した「PURL(パール)方式」、これは欧州諸国が自らの資金で米国兵器を購入し、ウクライナに供与する仕組みで、米国は自国の財政負担を避けつつ軍需産業を潤すモデルです。欧州がトランプ政権終了の2029年まで「時間稼ぎ」を強いられる実態が明らかになりました。さらに戦争終結のシナリオとして、分断状態のまま安全保障を担保する「西ドイツモデル」や「韓国モデル(休戦ラインの設定)」、領土回復を棚上げにした苦肉の選択肢にも言及しました。これは、正義の追求と現実的生存の狭間で揺れる国際政治の非情な側面を示唆するものです。

■質疑応答・会場からの質問
質疑応答で会場から様々な質問が寄せられ、主なものは「経済制裁の実効性とロシアの耐久力」「トランプ政権後の日欧関係」「欧州市民の忍耐の限界点はどこか」というもので、両教授は、対露制裁の「穴」を埋める難しさや、日本の安全保障が欧州の動向とも密接にリンクしている事実を改めて強調しました。最後に河野教授が、こうした複雑な問題を読み解くための「専門知」の重要性を説き、国際社会の一員として考え続ける意義を再確認し、締めくくりました。

2026031203.JPG



  1. 人間社会学部
    #心理 #保育 #国際
  2. 変わることを、楽しむために。
    オープンキャンパス日程一覧

※ 2026年度より、人間社会学部 総合心理学科、子ども教育学科、国際学科で募集します。