座学と現場で国際感覚を養うゼミ合宿:フィリピン共和国ダバオ市
8月中旬、国際社会学部の河野毅教授の国際社会基礎ゼミ(2年生3名)は、フィリピンのダバオ市でゼミ合宿を行いました。河野ゼミでは、海外合宿を通じて、国家発展や開発についての理解を深めることを目的としています。昨年は東ティモールでゼミ合宿を行っています(過去記事はこちら )
在留日系人の経験から学ぶ
ダバオ市近郊には、太平洋戦争前、約2万人の日本人が住み、マニラ麻の生産や漁業に従事していました。戦前の平和な時代には、フィリピン人女性と家庭を築く日本人男性もおり、地域社会に深く根付いていました。しかし、戦争が始まると状況は一変し、多くの日本人が帰国や戦死を余儀なくされ、フィリピン人との家庭は悲劇的な運命をたどることになりました。特に、日系二世たちは父系血統に基づくフィリピンの国籍法により、国籍を持たないまま苦しい生活を強いられました。現在でも多くの残留日系人が無国籍状態に置かれています。
今回の合宿では、日本人墓地に献花し、戦後も続く日系人の歴史と生活を展示する「日本・フィリピン歴史資料館」を訪れました。学生たちは、戦争から79年経過しても、戦争がもたらした深い傷跡が今なお現地に残ることを改めて実感しました。
現地学生との交流
ミンダナオ国際大学での河野教授による「国連安全保障理事会の役割」に関する講演のあと、本学生たちは現地の学生たちと自己紹介を交わし、手作りの「しおり」をプレゼントしました。日本語教育を中心とするこの大学は、親日感が高まるフィリピンにおいて日本文化を広める拠点となっています。
農業体験と食文化
ダバオ市から車で3時間のマラグサン市にあるドール社のバナナ園を訪問し、バナナの育成過程や輸出向けの箱詰め工場を見学しました。また、ダバオ名物のドリアンや他のトロピカルフルーツを味わい、フィリピンの食文化に触れる機会もありました。
総領事の支援に感謝
今回の合宿は、在ダバオ日本国総領事、石川義久氏の支援により実現しました。学生たちは、日本とダバオの深い歴史的なつながりを学び、戦争後の日系人の生活再建の努力を知る機会となりました。さらに、現地の学生との交流や、ビサヤ語、食文化など異文化に触れる体験を通して、国際感覚を磨くことができました。石川総領事によると、日本政府は無国籍状態の日系人の国籍回復や支援のため、実態調査を拡充しているとのことです。このような取り組みを通じて、太平洋戦争が残した大きな傷跡を癒すための支援が進むことを願っています。
(関連情報)
テレビ朝日制作「テレメンタリー:続 彷徨い続ける同胞」
石川総領事がインタビューを受けています。
https://youtu.be/CnuuYsILvfI?si=DrHO-INKEvEicOp6