卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
本日ここに、揃いのガウンとキャップを身にまとい、この晴れやかな卒業式に臨まれる皆さんの姿を拝見し、教職員を代表して心からお祝い申し上げます。また、皆さんを支えてくださったご家族の皆様にも、深い感謝の意を表します。皆さんの門出をお祝いするために、学院の理事長はじめ理事、評議員の方々、多くのご来賓の皆様にお越しいただきました。重ねて御礼申し上げます。
本学の卒業式はキリスト教の礼拝形式に則って行われます。この場で皆さんは、学びを通じて養われた知性と、敬神奉仕の精神を胸に刻み、新しい世界に向けて踏み出す大切な一歩を刻むことになります。
さて、卒業生の皆さん、皆さんにとっての大学生活はいかがでしたか。勉学に励み、ゼミや演習、実習を通して深い学びを得るとともに、仲間との友情を育み、思い出をたくさん作られたことと思います。これらの経験は、皆さんの人生においてかけがえのない財産となるでしょう。
今日皆さんが手にする卒業証書・学位記は、単なる一枚の紙ではなく、四年間の努力と成長の証です。これから皆さんの履歴書には、「東洋英和女学院大学 人間科学部または国際社会学部 卒業、人間科学あるいは社会科学の学士を取得」と記されることになります。そして皆さんは今日から、1万6千人を超える先輩たちが築いてきた同窓生ネットワークの一員となります。本学で学んだことを活かし、自信を持って、豊かで実りある人生を歩んでいただきたいと思います。
大学を卒業するということは、新しい自由と同時に責任を手にすることでもあります。これまで親や保護者、教師の支えのもとで培ってきた知識や経験を頼りに、自らの意思で進む道を切り拓いていくのです。未知の世界に踏み出す時、不安や迷いが生じることもあるでしょう。しかし、恐れることはありません。皆さんには、東洋英和で培った力があります。
皆さんはこれから、それぞれが選んだ道で、社会に貢献する人として歩み始めます。人間科学・国際社会学で学んだ知識は、現代社会が直面する多様な課題――少子高齢化や格差、環境問題、地球規模の問題に取り組む力となります。学んだことを単なる知識として留めるのではなく、社会をより良くするための知恵として使ってください。そして、人と人、人と社会をつなぐ優しさや想像力も忘れないでください。
また、現代はデジタル化や生成AIの進展など、新しい技術が急速に生活や社会を変えつつあります。便利さや効率の追求だけでなく、人間の倫理や人文知に基づく判断力がこれまで以上に求められます。皆さんの柔らかな知性を、単に情報を処理するだけでなく、意味を読み取り、他者の痛みや喜びを理解する力へと育ててください。
本日、卒業生の皆さんには、この後、大学から、黄色い水仙の花(黄水仙)を卒業証書・学位記とともにお贈りします。この花の贈呈は東洋英和女学院の慣行で、その起源は戦前まで遡ります。東洋英和ゆかりの地であるカナダでは、黄色い水仙は、主であるキリストの受難と復活を祈念する時期に一面に咲き誇ることから、レント・リリー(Lent lily受難のゆり)とも呼ばれます。皆さんは、東洋英和の学院標語、「敬神奉仕」の精神を、どうか忘れないでいただきたいと思います。「敬神奉仕」が、明日から新しい世界に向かって船を漕ぎ出そうとしている東洋英和の卒業生に、力強い支えと追い風になってくれるに違いありません。
今日の卒業式は、皆さんにとって大学での最後の日であると同時に、人生の新たな始まり、いわば「コメンスメント」です。どうかこれからも、学んだことを自分のものとして胸に刻み、挑戦を恐れず、未知の世界に一歩一歩進んでいってください。
最後に、卒業生の皆さんに、ぜひ覚えておいて欲しい言葉を贈ります。批評家であり、随筆家でもある若松英輔さんという人の『詩集 美しいとき』の中の「若い人たちへ」*という詩です。読みます。
君たちは こんなに
柔らかな知性を
持っているのだから
そんなに早く
分かったなどと
言ってはいけない
世の中には
分かることと
けっして
分からないことが
存在するのを
見過ごしたままで
分かることだけで
自分の世界を
塗りつぶして
何かを分かったように
思い込んでは
いけない
ほんとうに
輝きたいなら 君は
誰かと
比べるのを
止めなくてはならない
ある人より
優れている
ということになっても
すぐに 別な人に
追い抜かれるかもしれない
君が
誰でもない
君であるなら
誰でもない光を
放つようになるだろう
本当に
輝きたいなら
君は いつも
君自身でいなくては
ならない
以上ですが、この詩の言葉には、肩の力を抜くための大切な言葉、自分を他人と比べず、分からないことも受け止めながら、自らの光を信じて歩むことの大切さが込められています。誰かが口にする一見正しいと思える主張に合わせる必要はありません。人生の曲がり角に立ち、迷いや不安に直面することがきっとあるでしょう。それでも、自分自身の光を信じ、勇気を持って、あなた自身として輝いて進んでください。
卒業生の皆さんのこれからの人生が、神の恵みと祝福に満ち溢れることを心から祈り、私の式辞といたします。本日はあらためて、卒業おめでとうございます。
2026年3月6日
東洋英和女学院大学
学長 星野三喜夫
*若松英輔『詩集 美しいとき』(p96~p99 亜紀書房、2022年)から引用