|
東洋英和の皆さんへ
宮平貴子
3年前、「アンを探して」のプロデューサーであるユリ・吉村・ガニオンさんから企画の相談を受け、村岡花子さんの訳した『赤毛のアン』を読んだとき私の人生が変わりました。
戦時中、敵性言語と知りながら、まるでモンゴメリの化身のように、人間愛とユーモアの精神をもって「Anne Of Green Gables」を訳した村岡花子さん。歴史に「もし」はないといいますが、それでも私はこう考えます。「大戦前、もしミス・ショーが村岡花子さんにこの本を渡さなかったら...。」きっと、村岡花子さんの柔軟な決断で"赤毛のアン"というタイトルがつくこともなく、こんなにも日本人の女性の心に大きな影響力を持って届くことも無かったでしょう。そう考えたら、当たり前に身近にある「本」という存在自体が奇蹟の産物に思えて来るのです。
この日本語版『赤毛のアン』の誕生秘話にインスピレーションを得て出来上がったのが本作「アンを探して」です。最愛の祖母を亡くした少女・杏里は、一人アンの島プリンスエドワードに渡ります。初め悲しみに沈み心を閉ざしていた杏里は、島での様々な出会いの中、人生の大切なことを見つけていき、成長していきます。映画「アンを探して」の物語の終盤、お別れパーティの席で杏里はスピーチをします。主人公が伝える"『赤毛のアン』をありがとう"という言葉は、原作者のモンゴメリに捧げる言葉でもあり、日本の私達にこの本を届けてくれた村岡花子さんに贈る言葉でもあります。
今は、お金さえあれば手に入らないものはない時代です。だからこそ物質的に乏しかった時よりも、人にとって「幸せ」とは何かが、逆に見えづらくなっている時代ともいえるでしょう。村岡花子さんは戦後早々から日本がこのような時代を迎えることを予見し、日本の子供達が文学によって、人間にとって一番大切な理性と良心を学ぶことを切望されていました。それは「赤毛のアン」シリーズを訳しただけでなく、その他多くの文学的名作を翻訳し、日本の少年少女達に送り届けていることからも伺えます。
最後になりますが、この映画のおかげで、村岡花子さんのお孫さんの村岡恵理さんや、学院関係者の皆様、現役の学生さんなど、東洋英和女学院に縁の深い方々に多くお会いする機会を頂きました。皆様エレガントで、多くを語らないけれども、目の奥に生き生きとした輝きを秘めており、そのオーラそのものが「東洋英和で学んだ」という誇りと気品かも知れない、と強く感じました。実は穂のか演じる主人公の杏里も、吉行和子さん演じる祖母の静香も、東洋英和で学んだ人物という裏設定があるので、ぜひご同胞と思って、映画を楽しんで頂けたらと思います! |