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「沖縄の伝統的相互扶助(ユイ)と自治」
講 師 安 里 英 子 氏 日 時 2002年11月18日(月)5限(16:00〜17:20) 場 所 横浜校舎 5201教室 <講義の概略> 安里氏はまず人々が一定の財産を共有するシステムともいうべき「共生」の動きとつながる視点を、論文などで示していた伊藤野枝、佐喜眞興英らの紹介から始めた。 彼らの論には暮らしの最小単位であるシマ(村落共同体)を中心にした相互扶助による「自治」の考え方があると指摘。それは沖縄におけるユイ、ユイマールと呼ばれる相互扶助の発想に連なるものだと述べ、ユイの具体例として沖縄国頭村奥部落の「共同店」を紹介。 「共同店」は奥に在籍する人々によって組織、運営されている。その利益で村税が支払われ、個人は納税する必要がない。また貸し付は学資と病気治療費に限定され、相互扶助の精神が見られる。しかし、最近は外来者も増え、「共同店」のサービスをどこまで行なうか、今後の課題として残されている。 また村にはウタキと呼ばれる祭祀の場所(聖地)があり、共同体の精神的拠り所になっている。祭祀を司るのは女性で、祭りのあいだ家事を担当するのは男性である。さらに部落には公民館があり、村民が様々な集会を持ち、共に語る場ともなっている。その機能はアメリカ先住民イロコイ族のロング・ハウスとも共通性を持っている。 共生の可能性は、小さな共同体の相互扶助の精神に見出だすことができるのではないか、と締めくくった。そして最後に相互扶助の精神が見られる沖縄の童謡を歌ってくださった。 講義を聞いた皆さんの声を少し紹介しましょう。一部抜粋のものもあります。 ☆沖縄の伝統文化の中にユイマールというものがあることを初めて知りました。伝統文化は女性を抑圧するものであるという考えはよく他の講義でも聞きますが、女性が主体となっている文化というのは沖縄の独自のものだと思います。現代社会では地域や共生といった意識やつながりはうすくなりましたが、沖縄やアメリカ先住民の文化にそれがまだ残っているのは貴重なことだと思います。沖縄の文化は日本の昔の文化の集大成のような気がしました。今だからこそ、沖縄のユイマールや共同という思想に学び、活かしていくことが大切ではないかと思います。(福祉 1年) ☆伝統的な儀式には、学ぶべきことが秘められているといることに気がつきました。(福祉 3年) ☆共同売店という考え方がすごくおもしろいと思った。資本主義本来の利益の輪(循環)が出来上がっていて理想的と感じた。(人間 1年) ☆相互扶助は、人間のあるべき姿のような気がした。(人間 2年) ☆世界の共存など大きくとらえていたのとは違って沖縄といった小さい範囲からとらえていたので身近に感じられました。共同店の利潤が村の自治に大きく関わっているなんて思ったこともなかったので、びっくりしました。歌もすばらしかったです。(人間 1年) ☆最後に歌われた民謡がとても素敵でした。民謡は人々の生活に根付いているものだと思うので、異文化コミュニケーションのときに相手を理解する手がかりになるのではないでしょうか。(人間 1年) ☆今日の話を聞いて、「相互扶助」ということで、私は福祉学科で勉強している観点から、この考えを福祉に生かせるなと思った。 東京の武蔵野市では、福祉公社を設立した。ここでは資産のある高齢者が担保を作って、在宅での介護を受けている。例えば担保切れになっても、担保が切れる前に亡くなってしまった人のお金を相互扶助の関係で便用し、実りある生涯を送ることができるというわけだ。互いに助け合って生きていくというのは難しいことだと思うが、今日の沖縄の話を聞いて素敵だ、すばらしいなと思い、私にできそうなことは、これからの社会に生かせることを考え、協力してきたいと思った。(福祉 3年) ☆沖縄は、日本の歴史とは別に苛酷な歴史をもっている。だからこそ、お互いに協力し合うという伝統的なものが生まれたように思う。共生という点で沖縄は昔から進んでいたという印象を受けた。ただ、沖縄と聞くと米軍基地のことを考えてしまうので沖縄の人々と米軍の共生についてはどうなのかも知りたいと思った。(人間 2年) *安里さんにまだコメントを頂いてないので、与那覇が応えます。 講義でも語っていたように、喜納昌吉の「すべての武器を楽器に」という言葉に感動して、安里さんは喜納氏と共にアメリカの反戦集会にも参加しています。基地反対は一貫していますから、米軍との共生は有り得ないと考えているのではないでしょうか。「米軍との共生」は、日本にある米軍基地の75%を沖縄に押しつけている「日本の人々」が、先に考える問題ではないでしょうか。 <安里英子氏プロフィール> 沖縄県那覇市首里生まれ。評論家、フリーランス・ライター。 沖縄の精神世界と、米軍基地のある政治的な場所としての沖縄の関係に注目し、1977年にミニコミ誌『地域の目』を発刊。地域(シマ)の自治や文化を取材する。1990年から97年にかけて、奄美から与那国などの琉球弧の島々の聖地を巡る。 今年の6月にはパレスチナ、8月に韓国、9月にフィリピンを訪れ、「基地」の存在がそれらの地域の抱える問題と、そしてまた沖縄の問題に繋がることを深く認識する。これまでの活動と『琉球孤の精神世界』(御茶の水書房1999年)により第2回女性文化賞を受賞。著書に『揺れる聖域』(沖縄タイムス社)『ハベルの詩』(御茶の水書房)、『沖縄・共同体の夢』(榕樹書林2002年)など。 |