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東洋英和女学院大学付属 かえで幼稚園
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保育だより 2月号

 
 
   
 

親子で登園する日々がもたらすものは

1月には、春の訪れを感じさせられる柔らかな日差しの日もありましたし、鼻の頭がツンとし、手がかじかみ、背中が丸まってしまうような冷たい薄暗い日もありました。子どもたちはと言えば、冷たい日でもぴょんぴょんと元気なのですが、明るい光が注ぐ日には、なお心弾ませ、じっくりと、たっぷりと、そして友だちとつながりあって遊んでいます。三学期の幼稚園は、落ち着きと活気がずっと続いていて、とてもゆかいです。

 ところで、1月の寒い寒いある朝、私は門の前で登園のお迎えをしながら、その空気からか、ふとなつかしい感覚に包まれていました。五歳から小学校卒業まで父の転勤で福島と仙台で過ごした私は、冬には心底「冷たーい」と感じる経験をたくさんしました。辛かったこともあったはずなのに、その日浮かんだ光景は幸せなものでした。幼稚園にやって来る多くの親子の姿を目にしていたからでしょうが、思い浮かんだのは母とのひとこまでした。
 小学校1年の冬だったと思います。私が母と一緒に冬木立ちの中を歩いていた時。「さむい、さむい」と言った私に、母はちょっとおどけて「さぶいね、さぶいね」と応えました。何度もその応答をくりかえすうちに、私も「さぶい、さぶい」と言い重ね、それから二人で足音をダンダンとさせて、「さぶい!」「さぶい!」とリズミカルに言いながら手をつないで家に帰った…という、ただそれだけのことなのですが、あの日の空の色と風の冷たさと共に甦ってきました。時折「あっ、これ…」と思い出す私の中の『冬のにおい』はあの日のにおいです。

 送り迎えを毎日続けられている保護者の方の心の中には、「ちょっとしんどいな」と感じられる日もあることでしょう。特に真冬と真夏、そして雨の日の道のりは大変なはずです。ですが、卒業されて何年も経ってから出会うお母さま方の多くの声は、「あの〈送り迎えの〉時間がなつかしく、子育ての中での幸せな時間でした」というものです。「大人では通り過ぎてしまうものが見えたり聞こえたり感じられたりできる時でした」というようなことばもよく聞かれます。
 ふり返った時に、大人にとって幸せと思えるのならば、一緒にいた子どもにとっても幸せであったことは間違いありません。細かいできごとは忘れていきますが、その時の安心で心地よい感覚は、人として生きていく時の宝物になっていくと信じられます。
 「さむーい」…「そうね、寒いわね」、「あのね、今日ケンカしちゃったの」…「あらあら、悲しかったわね」、「竹馬で三歩あるけたよ」…「嬉しいわね」等というさりげない共感の対話が、これからの親子の歩みを支える信頼の基盤をつくっていきます。
 冬には霜柱をザクッザクッと踏みしめる足の裏の感覚や、草木の芽吹き、夏には木陰の心地よさや、セミの声のシャワー等々、感じたことを「おもしろいね」「気持ち良いね」「すてきね」…と伝え合う中、親子共々五感が豊かに開かれていきます。その一瞬一瞬が、心の中に文学や音楽や絵画や映画などを楽しめる感性の引き出しを増やしていき、人生をより楽しくします。(もちろん、歩くことそのものが、足の筋力を強めたり、周りの状況に注意をはらって判断する力を育てたり、公共の場のマナーを覚えること等につながります。)
 お子さんと手をつなぎ、(あるいは共に自転車に乗って)春・夏・秋・冬を感じながらの送り迎えの三年間、二年間のもたらすものは、十年後あるいは二十年後にわかることでしょう。きっと暖かな思い出といくつもの恵みがあるはずです。

         「善い人は、良いものを入れた倉から良いものを取り出す」
                                                 マタイ12章35節より

                                                                 大漉 知子