アクア・センターの第1の目的は学生・教職員が習慣的に運動を実践できる場を提供することである。すでに本学には、各種球技のできる広いグランドと大きな室内体育館、夜間照明付きテニスコート、ゴルフ練習場などの運動施設がある。そして、トレーニング・ルームを併設する水泳・水中運動施設が加わったことで、体育系大学をのぞけば、本学はわが国の女子大の中でもっとも充実した運動施設を有することとなった。
本学で共通科目として開講している「健康科学概論」では、「健康・体力の保持増進には、習慣的な運動実践が不可欠である」と講義している。しかし、時間に追われる生活を送っている多くの大学構成員にとっては、多様な運動施設が身近にあってはじめて、運動を日常的に実践しようという気運が高まるのである。したがって、アクア・センターが完成したことによって、本学の理念と実際との一致が実現する可能性が高まったといえる。特に学生には学生時代とともに、生涯にわたって運動を実践できる習慣を身につける理想的な環境が整備されたことになる。
また、生涯学習センターでは、学外の成人女性を対象とした水泳・水中運動講座を開講し、運動の習慣を身につけてもらうことを目的としている。
アクア・センターの第2の目的は、健康実践のもたらす心理的な効果をよりいっそう高めることである。運動実践が"こころ"の状態を良好に保つ上で有効であることは、多くの調査・研究が明らかにしている。しかし、運動する環境が劣悪であれば、当然その効果が薄れる。我が国のこれまでの学校運動施設には、この点での配慮がまったく欠けていたといえる。このため、アクア・センターには、室内の色調、空調、照明、音響、窓からの眺望などに、できる限りの工夫をこらした。また、湿りがちなプール周辺を床暖房によって乾いた状態を保つ、プールサイドに広い温浴槽を設け心身ともにリラックスできるようにするなどの配慮もした。なお、入り口からプールサイドまでのアプローチは、まったく段差をなくし、通路の幅員を広くし手すりをつけた。また、プール内へ車椅子のまま入水できる特別のコースを設けてある。さらに、両側に手すりのある幅2m、水深1mで滑りにくいタイル張りの歩行用のコースと、幅2m、水深1.2mの水泳用の3コースを並行して配置した。
"こころ"に不安を抱く学生が急増している現在、悩まされやすい"こころ"を健康に保つのに役立つ場を提供できるものと信じている。
アクア・センターの第3の目的は、スポーツでより高い競技レベルを目指す学生たちに、トレーニングする場を提供することである。水泳・水中運動は持久力の向上に、また、障害からのリハビリテーションに有効である。そして、各種マシンが設置してあるトレーニング・ルームでは、筋肉が発揮できるパワーの増大に不可欠なレジスタンス・トレーニングが実施できる。実際、テニス部、ラクロス部、ホッケー部、チアリーダー部員などパワーアップのトレーニングを定期的に実施している。
本学学生が各種スポーツにおける競技力を向上させ、その学生たちを多くの学生・教職員が応援するようになれば、大学構成員の間で明るい会話が交わされるようになることが期待できる。
このようなアクア・センターは、緑に囲まれた見晴らしの良い場所にある。さらに上記のように、多様な人たちが共通して利用できる構造と機能を有している。いい換えれば、構造上のバリアフリーばかりでなく、水泳選手、一般選手、障害者が同時に運動する喜びが味わえ、相互に会話が生れる可能性が広がり、こころのバリアが取り除かれる場を提供することができる。