人間社会学部 総合心理学科
篠原 道夫教授

ユング心理学は,ノイローゼなどの心理療法の体験を基礎としてた心理学です。単なる心理療法の技術論・治療理論を超えて,生き方を論じている点が魅力的です。生きていくことの指針を与えてくれる心理学です。生き方ならば,哲学や宗教学から多くを学べるかもしれません。しかし,哲学や宗教学は,大きな話(抽象的な話?)をしてくれますが,日常生活をどう生きるかを教えてくれません。その点で,ユング心理学は,ノイローゼなどの具体的問題を通して指針を示してれます。
具体的には,①基本文献の講読と②事例研究の2つを軸にして展開しています。まず,①文献購読では,河合隼雄の文献を軸とします。ユング自身の著作にいきなり取り組もうとしても,歯が立たないからです。また,ユングの限界は,西洋人との心理療法を基礎としている点です。西洋人の心理にはキリスト教が色濃く影をおとしています。その点で,日本人の心理とは少しズレているのです。この弱点に取り組んだ第1人者が,河合隼雄です。彼は,仏教を手掛かりにして,ユング心理学をローカライズしてくれています。
上述の通り,ユング心理学はノイローゼなどの心理療法の体験を基礎としています。そのため,②事例研究をゼミでも大切にします。具体的には,抑うつ,強迫,チック,トラウマ,書痙などの多様な臨床事例を検討します。ユング心理学では,特に夢分析や箱庭療法などのイメージの力を重視します。心は,目にみることも,触ることもできません(それでいて,その動きを実感できます)。そこにイメージという仕掛けを導入することで,心が目に見えるようになったり,触れたりできるようになります。
心理療法は,スポーツのようなものです。頭で理解しているだけで,十分ではありません。心理療法におけるもっとも大切な道具は,自分の心です。そのため,自分の心を見つめること,自分の心を鍛えることは,とても大切なことです。そこで,③箱庭やコラージュの制作体験や,④合宿形式でのファンタジーグループなど,自己体験を通した学習も実施します。「ファンタジーグループ」とは,フィンガーペインティングを主としたアートグループのようなものです。
このような形で,ユング心理学の基本について学んでいきます。そして,心理療法を通して表れる深層心理の世界について探求します。その成果を踏まえて,卒業研究につながる自分の研究テーマを明らかにしていきます。自分のテーマをつかまえることは,自分を知ることと地続きです。
・「自己愛人格者の事例研究―ロールシャッハ法を通して」
・「元型的象徴目録を用いた普遍的無意識の実証的研究」
・「ユングのタイプ論から見た攻撃性の表出スタイルの研究」
・「信仰における啓示的な夢」
・「きょうだい関係とカイン・コンプレックス―言語連想検査をとおして」
私は、臨床心理系の大学院に進学したいと思っています。篠原ゼミでは、専門の知識や英語を少人数で勉強しています。皆それぞれ自分が研究したいテーマで卒論に臨んでいます。先生の卒論指導は的確でとっても丁寧なので助かります。(akkokko)
子どもの心理療法、プレイセラピーに興味がありました。先生は面倒みが良く、臨床心理士志望の学生に勉強会を開いてくれたり、質問には率直に答えてくれます。勉強会は少人数で、たまに脱線しておしゃべりをしたり、授業ではない交流ができると思います。(Plane)
私は以前から大学院に進学し、臨床心理士になる事を希望していました。その際、臨床心理学を基礎的な所からしっかりと学ぶ点や院試に向けての自主ゼミや合宿等にも力を入れてる点に大変魅力を感じ、篠原ゼミを選びました。ゼミでは、少しでも疑問に思った点は難なく質問出来る雰囲気にあります。またそれに対し先生も大変わかりやすく、そしてプラスアルファの面も教えて下さる点が大変勉強になります。ゼミ以外の事でも様々な相談に気軽にのって下さるため、勉強以外の事もサポートして下さる点も大変助かっています。自主ゼミは四年生の方々と一緒に行うので最初は知識の差に戸惑いましたが、大変良い刺激となると思います。また三四年合同のゼミコンパは、大変楽しめますし就職希望の方も大学院進学されている方も先輩方にアドバイスを聞ける良いチャンスとなっています。(J.H)
私は1・2年の頃にボランティアを通じ子ども達と関わったことで、将来もそのような子どもに関わる心理職に就きたいと思っています。篠原ゼミでは、セラピーに関する基本的知識だけでなく、これから専門分野を研究していくにあたって非常に参考になる資料に触れることができます。また、自主ゼミでは普段の授業とは違った話を聞くことができ、楽しみながらも勉強になります。初めは、ゼミの学習スタイルに少し戸惑いましたが、今では皆意見を出し合いながら積極的に授業に参加しています。(遊牧民)