新年のお慶びを申し上げます。
皆さまはどのような思いの中で2024年を迎えられたでしょうか。
猛威を振るった新型コロナウイルスも落ち着き、昨年5月には感染症法上の取り扱いが5類となったことから、学内の感染症対策も徐々に緩和され、キャンパスはコロナ前の日常をほぼ取り戻しています。コロナ禍でのオンラインやオンデマンド配信の授業では、教員、職員、学生ともに当初は手こずりましたが、ポストコロナでは、コロナ下で工夫し身に付けた技術や経験を活かし、授業形態、スキルも進化しており、大変嬉しく思います。コロナの期間中、高校でも大学でも何かと制限が多かった分、学生達は教室の外に出て、社会貢献や地域協力活動において、自身の目と耳と足で経験値を増やしてくれているようです。
世界に目を向ければ、戦後、長い議論を経て反戦・平和への希求が世界全体で共有されてきた筈であるにも拘わらず、ウクライナへのロシア進攻の長期化、イスラエルとハマス・パレスチナの軍事衝突など世界情勢が緊迫し、先行きが見えない状況にあります。国内では政治資金パーティを巡る問題が政界を大きく揺るがしたまま2024年を迎えました。このような混沌として不確実で課題が多い時代だからこそ、飛び交う情報を取捨選択・精査し、個人レベル、あるいは所属している組織で何をすべきか、何ができるかを真剣に考えてみたいと思っています。その際に拠り所となるのが、隣人を愛し仕える「敬神奉仕」の建学の精神なのだと思います。
高等教育を取り巻く環境も想定を超える速さで変化しています。大学では生成AIの教育、研究、大学運営への利用が慎重な中にも前向きに進められています。
本学に関連することとしては、「女子大離れ」が時々話題に上がります。しかし女子大学の意義は決して薄れてはいませんし、教育の中身や進路支援等、諸々の学生対応において女子大学が男女共学の大学より見劣りしているということは決してありません。むしろ少人数で、教職員との距離が近く、学生一人ひとりを親身にケアする本学のような女子教育の良さは、その社会的評価は高まりこそすれ薄まることはないと思います。女子学生同士で切磋琢磨する教育環境で、グループをまとめたり活動の企画や運営を行う、また外部との折衝も女子だけで行うといったことを通じて、自立心が育まれリーダーシップが身につきます。その結果、卒業後社会に出てからさまざまな分野で臆することなく活躍できるようになります。そのことが引いては性差による役割分担のないジェンダー平等を実現する原動力にもなると思うのです。問題は女子大学の良さを今後もどのようにアピールしていくか、です。
社会の変化の一つに多様性の重視が言われています。本学は外国人の住民が多く住む横浜市にあり、大学周辺にはインドをはじめ多くの外国籍の方が暮らしています。多様性に対する意識を高め、異なる考え方や価値観を持つ人達のことを理解し、コミュニケートが取れるようになることはこれからの世界で大切なことです。
最後に、2024年で開学35周年を迎える本学は、「その先」を見据えて大学改革を進めています。学生一人ひとりを大切にする本学の教育の良さをさらに高め、また競争力を強化して「敬神奉仕」の建学の精神のもと、協働力とコミュニケーション力をはじめとする総合力を身に付けた、次世代を担う卒業生を世に送り続けたいと思います。大学を巡る環境は引き続き厳しいものがありますが、教職員一丸となって困難かつ新しい時代の経営的な課題を解決して行きたい。35周年の節目の2024年をスタートするにあたり、以上のようなことに思いをめぐらせて、オール東洋英和女学院大学として教職員皆で前進をしたいと考えます。
引き続き皆さまのご理解とご支援を賜りますよう、お願いいたします。
2024年1月
東洋英和女学院大学
学長 星野 三喜夫