タイトル画像:大学概要
大学概要

学長室から

2023年度 大学卒業式式辞

 卒業生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。本学で必要な単位を修得され、本日めでたく卒業される皆さんのご努力に対し、心より敬意を表し、教職員を代表してお祝い致します。また、皆さんの大学生活を支えてくださった保護者の皆様にも心から祝意を申し上げたいと思います。

 皆さんは、4年前の入学では新型ウイルス感染症のため入学式を行うことができず、ようやく2年生の4月に歓迎式という形で式典を行うことができました。その後も、大学での行事や活動が何かと制約を受けた大学生活を過ごされました。本日、この卒業式は、感染防止を施した中ではありますが、皆さんのご卒業をお祝いするために臨席下さった来賓の方々、関係者の方々が見守る中で、この晴れの卒業式を厳かに挙行できますことを、大変嬉しく思っております。本学の卒業式は、キリスト教の礼拝形式で厳かに行っておりますが、神への祈りの中で、本学で得た学びと敬神奉仕を糧に、未来の世界に飛び出そうとされている卒業生の皆さんの大切な出発点だと確信しております。

 さて、卒業生の皆さんにお訊きしましょう。東洋英和女学院大学での学生生活は如何でしたでしょうか。充実したものでしたか。勉学や実習に励みましたか。コロナ禍で制限が多く、窮屈なことを強いられ大変だったとは思いますが、そのような中においても、皆さんは本学で研鑽を積み、知識やスキル、資格を身に付け、また教員・職員とたくさんの経験や体験を共有し、かけがえのない友達と友情を育みながら、良い思い出をいっぱい作ったのではないかと思います。

 大学卒業は、皆さんの人生において、大きな節目となります。皆さんは今日、卒業証書・学位記を手にされます。皆さんがこれから書く履歴書には、東洋英和女学院大学人間科学部/国際社会学部の課程を修了し、人間科学/社会科学の学士の学位を取得した、という新しい項目が加わります。本学には、皆さんより先に学び卒業していった16千人を超える先輩達が、日本国内はもとより世界各地で活躍しています。皆さんは、今日からその同窓生の仲間入りをします。東洋英和女学院大学で学んだこと、経験したことを十分活かして、そして本学の卒業生であることに誇りを持ち、胸を張って、実りある豊かな人生を切り拓いていって欲しいと思います。

 皆さんの大学生活も今日で終わりますね。授業やゼミで当たり前のようにしていた「みんなで集まる」ということが明日からはなくなります。しかし、大学を離れても、大学のことは忘れずに、卒業生OGとして、いつまでも母校を大切に想っていただきたいと思います。皆さんは、母校である東洋英和女学院大学の先生方、職員との連絡を切らさないようにしてください。良いこと、嬉しいことはもちろんですが、困ったこと、悩んでいることがあったら、ぜひ連絡をし、また相談をして欲しいと思います。ラインやショートメールで良いので、近況を報告するようにしてください。私たち教職員は皆さんが卒業した後も、ずっとこの東洋英和の横浜のキャンパスでスタンバイしています。それから、四年間一緒に過ごした学友とは今日以降、頻繁に会えなくなります。学友は一生の宝です。どうか大切にしてください。

 卒業生の皆さん。明日からは、本当の意味での社会人として、それぞれが選んだ場所で、それぞれの人生を歩むことになります。四年前の高校の卒業式では、きっと、校長先生やクラス担任、あるいは進路指導の先生から、「これから行く大学で、自由な時間を謳歌し、勉強や部活に一生懸命に励んでください」と言われて送り出されたと思います。四年後の今日の大学の卒業式では、「これで楽しかった四年間が終わり、厳しい社会に出ていくのだよ」ということを言わなければなりません。しかし、雛が巣だって自分で餌を採りに行くように、これまでご両親や保護者に養ってもらっていた半人前の存在から独り立ちするのですから、これほどめでたいことはなく、人生のこの門出を大いに祝福したいと思います。

 さて、本日の卒業に当たり、皆さんに気の利いたエールの言葉を贈りたいと思っているのですが、昔、中学生の頃に私が読んで感動した本のエピソードをご紹介し、そこに出ている言葉を贈りたいと思います。皆さんも読んだことがおありだと思います。児童文学でありながら、子供の心を失ってしまった大人に向けた示唆に富む言葉がいっぱい詰まった、サン・テグジュぺリの『星の王子さま』です。その中にある一節です。フランス人の著者サン・テグジュぺリ自身、パイロットであり、『星の王子さま』は不時着したパイロットと、他の星から落ちてきた不思議な少年(星の王子さま)との交流を描いた物語です。星の王子さまは6つの星を巡り、7番目に地球に舞い降りてきて、そこでキツネと出合い、しばらく一緒に過ごしてキツネと色々な会話をします。最後にキツネとさよならをする時に、キツネが王子さまに言った言葉が今日、私が皆さんに贈りたい言葉です。それは、「大切なものは、目に見えない。でも、心の中には大切に育ててきたバラの花がある」という言葉です。以下は多少意訳を含んだ私の拙い日本語訳です。王子さまの質問に答えてキツネが言いました。「大切なこと?じゃあ、秘密を教えるね。とても簡単なことだよ。それはね、ものごとはね、心で見ないとよく見えない、ってことなんだ。一番肝心なことはね、目には見えないんだよ。君が地球に来る前に自分の星で育てて、置いてきたバラ、それをかけがえのないものにしたのは、君がバラのために、毎日毎日欠かさず水をやったこととか、時にはバラの花についた毛虫をとってやったこととかに費やした時間だったんだよ。どんなにつまらないと思っても、我慢してやったこと、それはバラと共に過ごしてきた大切な時間なんだ。君が限られた時間を使って、愛情を注いで育てたバラは、いつしか君にとってかけがえのない大切なものに変わっているんだよ。夜空の星達が美しいのはね、ここからは見えない花が、その星のどこかで一輪咲いているからなんだよ。」ここまでです。目の前にどんなに素敵なものがあっても、本当に大切なものは見つけづらいし、見ても見えないものばかりです。心とか、愛とか、命とか、未来...とか。ですが、皆さんのこころの中には、皆さんがずっと大切に育ててきたバラの花があります。そのことを忘れずにいて欲しいと思います。そうすれば、そのバラの花はいつまでも皆さんの心の中で輝きを失わず、咲き続け、煌めき続けます。皆さんは一人ひとりがバラの花を心の中に持ったかけがえのない星です。一番肝心なこと、一番大切なことは目に見えない、でも自分にはバラの花があることをしっかりと分かっていて、辛い時、苦しい時は自分で育ててきたバラの花を思い出し、そっと見るようにする、それが大切なことだと私は思います。

 さて、本日、卒業生の皆さんには、この後、大学から、お祝いとして、バラの花ではなく、黄色い水仙の花(黄水仙)を卒業証書・学位記とともにお贈りします。この花の贈呈は東洋英和女学院の慣行で、その起源は戦前まで遡ります。東洋英和ゆかりの地であるカナダでは、黄色い水仙は、主であるキリスト教の受難と復活を祈念する時期に一面に咲き誇るところから、レント・リリー(Lent lily受難のゆり)とも呼ばれます。また、黄水仙の花ことばの一つに「愛に応える」があります。皆さんは、黄水仙の花一輪に込められた「敬神奉仕」の建学の精神とスクールモットーを、どうか忘れないで頂きたいと思います。「敬神奉仕」が、明日から新しい世界に向かって船を漕ぎ出そうとしている東洋英和の卒業生に力強い支えと追い風になってくれるに違いありません。

 今日のこの卒業式は皆さんにとって東洋英和女学院大学での最後の日ですが、同時に、次のステップへの始まり、コメンスメントです。強い意志と高い志を持ち続けて人生を歩む皆さんのご健闘と、そして皆さんの未来に栄光があることを祈ります。どうぞ、自信を持って東洋英和女学院大学を巣立ち、そして、この大学で育てた、心の中に咲いている皆さんだけの、皆さんだけが見える大切なバラに水をやり続けて、大きくて立派なバラの花を咲かせていってください。

 皆さんの未来に輝かしい実りと祝福があらんことを祈ります。Wish you the best of luck in your future. ご卒業、おめでとうございます。

 

  202438

東洋英和女学院大学
学長 星野 三喜夫

おすすめコンテンツ