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大学概要

学長室から

2020年度 大学卒業式式辞

 本日ここに晴れて卒業されるみなさん、おめでとうございます。必要な単位を取得され、また卒業論文をまとめられるなど、今日のこの日に向けてのみなさんの在学中のご努力に対し、衷心より敬意を表したいと思います。新型コロナ感染症対策で、緊急事態宣言が続いている現在、感染防止に万全を期す必要があるため、本来であれば御列席いただくべき卒業生のご家族や来賓の方々には学内への入構をお控えいただくこととなり、この卒業の式典も例年に比べれば賑わいに欠けるものとなっております。やむを得ない仕儀ではありますが、式典の模様はオンラインで配信されるなど、それなりの工夫が凝らされておりますので、卒業生諸君とともに喜びを分かち合っていただければと願っているところです。

 昨年は、卒業式も入学式も中止となってしまいました。それら節目節目で行われる行事を含めて、大学生活を律しているスケジュールを一般に「学事暦」と呼びます。大学は年度の初めに一つの学年を受け入れ、教育し、年度末に社会に送り出していきます。もとより、生涯学習という言葉があるくらいですから、学問それ自体はその気になれば一生のうちで、いつでもどこでも始めたり、中断したものを再開したりすることができます。しかし本学のような大学が主として相手にしているのは、未成年から成人して社会に加わっていく移行期の、後戻りのできない、繰り返しのきかない皆さんたちの時間にほかなりません。皆さんは、この学事暦にしたがって、修学し、単位を取得し、学位を与えられて卒業し、それぞれに社会に出ていくのです。社会は皆さんたち新しい「社会人」を受け取って、粛々とその新陳代謝を進めていくわけです。このサイクルを回していくことが、大学が社会において果たしている大きな役割の一つです。

 今般のコロナ危機は、実は大学の社会的機能の基軸ともいうべきこの学事暦を深刻に脅かすものでした。大学教育の現場において、「非対面」「非接触」が強く求められ、そもそもキャンパスに学生を入れるなという社会的な圧力が圧し掛かってきたのですから。教育セクターと実社会との間の主要な接合の場、という大学の社会的機能は、学事暦というシステムを通じて果たされているのです。そのシステムに破断が生じる、すなわち学事暦が止まってしまうと、影響と損失は社会全体に複数の年度にまたがって及ぶことになります。皆さんが最終学年を過ごしたこの一年は、本学を含めて全国津々浦々の大学がそのような危機に直面した年度として、今後長く語り継がれることになろうかと思います。

 危機がともかくも乗り越えられたのは、ご承知のようにいわゆる遠隔教育のハードやソフトが実用化されていたからにほかなりません。これが10年前、否、5年前であったら、果たして学事暦を止めずにいられたかどうか、疑問なしとしません。同時に、オンライン受講に戸惑いながらもこれをわがものとして来た皆さんたちの努力や、在宅からの授業やそのサポートを強いられた末端の教職員の苦闘も忘れてはならないでしょう。「学事暦を止めるな」を合言葉に、一丸となって邁進してきた結果、ここにいま、皆さんが座っているのです。規模が縮小されていても、賑わいが乏しくても、この卒業式は、皆さんにとっても私ども教職員にとっても、まことに晴れがましい、誇るに足る式典であるということを噛み締めていただきたいと思います。

 さて、本学では、学士号の学位記とともに、卒業生お一人おひとりに黄色いスイセンの花をお贈りしております。これは幼稚園から高等部までの卒業式では古くから行われている慣行で、その起源は戦前にまで遡ります。東洋英和所縁(ゆかり)の地であるカナダでは、黄色い水仙は主であるキリストの受難と復活を記念するこの時期に一面に咲き誇るところから、レントリリー(「受難節の百合」)とも呼ばれる花です。復活のキリストを仰ぎ、その光の中を一歩一歩着実に、雄々しく歩んで行って貰いたい。そのような思いの下に、開学から30年を経たばかりという若いこの大学においても東洋英和女学院の伝統に倣っています。願わくはみなさんが、この一輪の黄水仙に込められた東洋英和136年のスクールモットーである「敬神奉仕」の四文字を革めて胸に刻んで、実社会という荒海に船出して行っていただきたいと思います。みなさんの航海の無事を祈りつつ、これを以て私の式辞といたします。

2021年3月12日
東洋英和女学院大学
学長 池田明史