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2021年度 大学入学式式辞

式辞

 
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご家族をはじめ、これまで新入生を支えてこられたご関係の皆様、本日は誠におめでとうございます。

 さて、皆さんのご入学を言祝ぎ慶賀するご挨拶ではありますが、何よりもまず、昨年来のいわゆる新型コロナウイルス感染症の拡大と、これに伴う私どもの社会の未曾有の経験について、触れないわけにはまいりません。我が国において、昨今再び罹患者数が増え始め、感染の第四波を迎えつつあるのではないかと危惧されているのはご承知の通りかと思います。このコロナ禍を「国難」と呼ぶ人もいるようですが、それは必ずしも正しくないように思います。なぜなら、この災禍の特徴は、全世界が共通に、同時にこれを経験しつつあるからです。4月初めの現在、全世界でこのウイルスに罹患した人の数は1億3千万人に迫る勢いで、不幸にして亡くなられた人々も280万人を突破しております。我が国だけに降りかかった災難ではありません。危機は、言葉の本来の意味でグローバルな危機なのです。

 グローバルとは、文字通り地球規模という意味です。現在私たちが抱えている地球規模の危機は、人類の誰一人正しい答えを知らない問題ばかりです。新型コロナウイルス感染症はその典型です。地球温暖化やプラスチックごみなどの環境問題もその一つです。また、グローバルに個人と個人とを結びつけ、その間に新しい組織化の手段を与えることになったウェブやソーシャルメディア(SNS)などは、私たちの生活を飛躍的に便利で豊かなものに変えた反面、それが差別の扇動や誹謗中傷の道具となり、あるいは犯罪に利用されるといった負の側面にどのように対処すればいいかも大きな課題です。これら未知の諸問題の所在を確かめ、その性質を分析し、これに対する解決策を自分の頭で考える力を身に付けること、それこそ皆さんの大学での学びの目標とならなければなりません。

 グローバルな危機に対しては、グローバルな解決が構想される必要があります。しかしそれは、誰か一人のスーパーマンとか天才とかが登場して、世界に向けて同じ一つの単純明快な解決策を示してくれるというようなシナリオにはなりません。地球規模で人間の社会がこの危機を乗り越えるためには、医療をはじめ、政治、経済、社会、国際関係から教育、文化まで、すべての領域で世界の各地に「新しい日常(New Normal)」が生まれ、新たな価値が創造される必要があるでしょう。皆さんのほとんどは、高校生としての最後の年をこのコロナ禍の下でさまざまな困惑と混乱、また不安を抱えながら過ごしたに違いありません。しかしそれは、皆さんにとどまらず、皆さんと同世代の世界中の若者と共有できる体験となっているのです。リアルタイムで同じ問題意識を抱える仲間が世界中に存在するという事実は、皆さんがグローバルという言葉を考える際のよいヒントになるだろうと思います。しかし同時に、そのようなグローバルな構想を実現するためには、それぞれ個別の国や社会に生きている仲間が、それぞれの環境の中で自分に何ができるかを個別に問うていく、そして各自で行動していくことが重要になります。'Think Globally, Act Locally' すなわち地球規模で考え、身の回りから行動していく。皆さんには、そういう人間になっていただきたいと思います。

 最後になりますが、本学の母胎である東洋英和女学院は今年で創設から137年目を迎えました。その建学の精神、スクールモットーは「敬神奉仕」の四文字です。神を敬い、他者とりわけ困っている人や弱い者に奉仕するというほどの意味です。コロナ禍が猖獗を極め始めた昨年3月にドイツのメルケル首相が国民に向けて行った演説に次の一節があります。「困難な時期であるからこそ、大切な人の傍にいたいと願うものです。私たちにとって、相手を慈しむ行為は、身体的な距離の近さや触れ合いを伴うものです。しかし残念ながら現状では、その逆こそが正しい選択なのです。いまは、距離を置くことが唯一、思いやりなのだということを、本当に全員が理解しなければなりません」というものでした。コロナ禍において他者に奉仕するということには、「距離を置くこと」が求められるのです。ここに、先ほど申し上げたNew NormalやThink Globally, Act Locallyといった言葉の意味するところが示唆されていると思えてなりません。

 皆さん、この東洋英和女学院大学へようこそ。皆さんを心から歓迎いたします。


2021年4月2日
東洋英和女学院大学
学長 池田 明史