死生学研究所沿革

 死生学研究所(The Institute of Thanatology)は、2003年に大学の研究所として開設されました。すべての人間にとって生と死の問題は根源的ですが、現代になって様々な問題が発生してきたために死生学の必要性が広く認められるようになりました。
 具体的には、大多数の人が病院で死を迎えるようになったことで、病気治療を目的とする医学だけでは死にゆく人々のケアができないことが認識されました。現代医療の領域では、脳死、臓器移植、がん告知、尊厳死、出生前診断などに関して、一人ひとりが自分の意思を決定することを求められます。また死にゆく人の看取り、死の受容、悲嘆とそのケア、さらには墓制、葬儀、介護問題、自殺、スピリチュアリティ、いじめ、いのちの教育、等々の問題において、誰もが人間観や死生観を問われます。しかしこれらの問題に対する態度決定は、その人々の背景にある宗教、思想、教育、社会などのあり方に大きく影響を受けることになります。そのため、複数の価値観が錯綜する現代社会の中で、多くの視点から総合的に、古今東西の文化や宗教をかえりみながら一人ひとりが自分の問題として、考え始めなければならなくなっています。
 欧米では1960年代から「死学」(Thanatology, Death Studies)という学問分野の必要性が認められていきました。日本ではこれを「死生学」として定着させました。死と生は密接に関連しているのであり、「死生観」という言葉に見られるように、死と生を一緒に考えるという伝統があるからです。
 東洋英和女学院大学は1989年の開学以来、学際的な研究と教育を主眼としてきたために、専任教員の専門分野が多岐にわたっています。学際的な死生学を目指す下地がありました。本研究所では人間科学部と国際社会学部の教員が協力し、さらに外部講師の助力も得ながら、宗教学、哲学、心理学、歴史学、美学・美術史、人類学、社会学、教育学、福祉学、法学、経済学、医学、看護学などの視点を取り入れて、多角的に死と生を考えてゆこうとしています。それだけでなく、死生学には基礎科学、人文科学、社会科学、自然科学、臨床科学などすべての科学の分野が総合されるような取り組みが必要になります。本研究所は、そのような総合学としての死生学を目指して、常に広い視野を持って、多くの人々の協力と連携を求めながら活動しています。
 主な活動として毎月一、二回の頻度で多彩な内容をもつ、公開の「連続講座」と「研究会」を主に土曜日に大学院校舎(港区六本木)で開催しています。公開講座の年間予定と個々の講座の詳細はこのホームページで公表しています。毎年の研究成果は、本研究所が編纂する『死生学年報』(リトン)によって公刊しています。2009年3月には5巻目の『死生学年報2009 死生学の可能性』を出版しました。この年報はバックナンバーも含めて一般書店で注文・購入ができます。

 

『死生学年報2009 死生学の可能性』発売のお知らせ

東洋英和女学院大学死生学研究所編
『死生学年報2009 死生学の可能性』
リトン、 2009年(3月31日刊)

書店にて定価2,500円+税でご注文、ご購入いただけます。

<お問合せ先>
東洋英和女学院大学・死生学研究所
shiseigaku@toyoeiwa.ac.jp(メール)

<目次>
総合学としての死生学の可能性          
渡辺和子

ソクラテスとイエスにとって死は何を意味したか? −プラトンのソクラテスとヨハネ福音書の
イエスの場合−
三上 章

ガンダーラ仏教美術における生(俗世間)と死
(出世間)
田辺勝美

死の舞踏の成立と伝播
小池寿子

袋=胞衣を被った子どもたち
−誕生・結婚・葬送の民俗と神話・昔話−
古川のり子

死後世界の再検討
津城寛文

ある子どもの理解
−ヘレン・ケラーがはじめて「死」と出会った時−
ミリアム・T.ブラック

再生医療技術への宗教の関わり
−ES細胞・iPS細胞研究における「全能性」を
めぐって−
大林雅之

<講演録>
がんと共に生きる
−死と向かいあってわかったこと−
真家年江


死生学研究所

死生学研究所では2009年度も多彩な研究会と講座を公開いたします。どなたでも、どの回でもどうぞご自由にご参加ください。

2009年 4月
東洋英和女学院大学 死生学研究所所長
                        渡辺 和子

■会場 東洋英和女学院大学大学院(六本木)
      六本木駅  (日比谷線 徒歩10分)
      麻布十番駅(大江戸線 徒歩5分)
■参加費無料 ■申込不要 ■当日先着順100名
■問合せ先 東洋英和女学院大学・死生学研究所
 〒106-8507 東京都港区六本木5-14-40
          03-3583-4035(Fax専用)
          shiseigaku@toyoeiwa.ac.jp

日程(土曜日)
発表者
所属

題  目

2009年
4月18日
河野和雄
本学非常勤講師
本学院オルガニスト
死と慰めの音楽  オルガンと歌によるレクチャコンサート 会場:マーガッレト・クレイグ記念講堂(本学大学院隣り)
5月30日
浜野佐知
映画監督
映画における高齢者の愛と性
6月27日

14:40〜
16:10

第1回
研究会

野口晴子
国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部第二室長/本学非常勤講師

世帯の経済資源が出産・育児期における女性の心理健康に与える影響

西 洋子
本学人間科学部教授
身体 −気づき・表現・つながり−
7月18日
奥野滋子
神奈川県立がんセンター・緩和医療部長
死に向き合う患者から学ぶ死生観
松岡秀明
淑徳大学教授
当事者、家族、医療従事者が直面する難題 −フィールドワークから−
島薗 進
東京大学大学院教授

宗教と宗教を超えるもの

10月17日

16:20〜
17:50

第4回
連続講座

浅井 篤
熊本大学大学院医学薬学研究部教授
映画における医療と死生観
10月24日
宇都宮輝夫
北海道大学教授
共通テーマ 死生観を学ぶ
(財)国際宗教研究所との共催
藤腹明子
仏教看護・ビハーラ学会会長
11月28日
葛西賢太
宗教情報センター研究員
死者を代弁して語ること
鈴木範久
立教大学名誉教授
中勘助の生と死
2010年
1月9日
前川美行
本学人間科学部准教授

心理療法で語られる夢のなかの死

長尾敦子
S.ソレイシィ
本学人間科学部准教授
本学国際社会学部講師
生と死に関わる欧米諸国の政治地理
1月23日
ミリアム・ブラック
本学人間科学部准教授
子どもの言語習得と精神発達に与える大人の影響
(発表は英語、日本語訳あり)
渡辺和子
本学人間科学部教授
『ギルガメシュ叙事詩』にみる死生観
2月20日
鈴木桂子
玉川大学非常勤講師/本学生涯学習センター講師
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン −幻視と生きる−
大林雅之
本学人間科学部教授
日本におけるカルチュラル・バイオエシックス(Cultural Bioethics)の可能性
2月27日

16:20〜
17:50

山田和夫
本学人間科学部教授
和歌の発生と系譜にみる死生学的意義
<2009年10月17日作成>