大学院案内・概要

学長挨拶

新しい時代に大学院で目指すもの

東洋英和女学院大学
学長 池田 明史

東洋英和女学院大学では1993年から大学院の活動を始めました。現在の日本社会は、周知のように、高齢化・少子化による人口構成の変化、社会全体の高学歴化など、過去に経験のない新しい事態に直面しています。高等教育機関としての大学も、その変化に敏感に対応することが必須になっています。しかし、一般に、大学は歴史上の伝統のなかにあるところから、なかなか変革が難しい上に、大学としての基本理念を大幅に変えることは、大学の自殺にもなりかねません。こうした幾つかの、ときには矛盾し合うような要素を抱えているなかで、大学院という制度にも、同様の変革が必要になっています。
 私たちは、そうした点を踏まえて、大学院の在り方に、次のような特色を与えることで、新しい時代に対応しようと考えてきました。特色の第一は、様々な年齢層、キャリア層に開かれた大学院であることです。
 一般に大学院は学部卒業者が、修めた学問をさらに進める場所として考えられてきました。必然的に学部卒業が大学院進学に直結するルートが本筋になります。私たちの大学院は、そうした学部卒業に直結したルートを否定しているわけではありません(最近はそういう志望者も徐々に増え、また受け入れてもいます)が、基本的には社会人、つまりすでに職業的なキャリア上にある方々に向かって開かれています。職業上必要とされる資格の取得はもちろん、新しい分野に挑戦しようとする方、子育てで暫く仕事を中断していた方が、職場復帰を図る際の基礎力のアップデートにも、利用して戴けると思っています。
 もちろん職業を持つ方々が、仕事と併行して大学院で学んだり、自分の研究を発展させたりすることは実際上、非常に大きな困難が伴います。その問題に、制度的に対応するために、講義やゼミは原則として夜間に設定されています。また土曜を休日としている働き場も多いので、土曜日には昼間のカリキュラムがあります。こうした方法は、実は大学の教職員スタッフに大きな犠牲を強いることになるのですが、それを超えて、二つの研究科において、献身的な熱意を持つ教職員たちが、この方法を支えて下さっています。それぞれの研究科でどのような領域が設定され、どのような資格が得られるかは、研究科概要をご参照下さい。
 もう一つ触れておくべき特色は、本学が女子大学であるにも関わらず、この大学院は両性に開かれていることです。これまで女性の専担のように考えられてきた看護職も、看護師として男性にも平等に開かれている時代です。職種における性差は今やほとんどありません。
 また過去のキャリアが短大卒であるような方でも、条件次第では大学院での学びや研究ができる道も開いています。その場合の条件については、ご相談戴ければと思います。また留学生も歓迎しています。
 もう一つ、お伝えしたいことがあります。このような大学院では、ある現場で経験を積んだ学生がその現場で培った特定の知見やノーハウは、「教える」側にいる教員の知識範囲を超えることもあり得る、という点です。それは「教える」ことと「学ぶ」ことが両面的な行為であることの、最も刺激的な場面でもあります。ゼミでも講義でも、「教える」ことと「学ぶ」ことが一瞬逆転する瞬間でもあるからです。教員は「教える」ことが「学ぶ」ことでもある、というスリリングな体験をしますし、学生の方でも同じです。それは、こうした大学院ならではのことで、決して否定されるべき事態ではないと私は信じています。
 こうして、様々なキャリアを持ち、それぞれに異なる経験を重ねた多様な属性をもつ人々が、私たちの大学院で、時間と空間を共有することができる、というのは、これからの日本、大きく見れば世界にとって、とても大切なことである、と信じます。
 一つ気をつけておきたいことがあります。大学院が研究者養成だけを目的としていた時代は終わっています。しかし、大学院は学生一人一人が、自ら学問の進展に寄与するのに必要な力を養う場であることまで終わってしまっているわけではありません。その意味で、大学院はあくまでも学問の場であり、学問の世界をリードする場でもあります。そこで「学ぶ」学生の皆さんも、「教える」側に立つ教員、それを支える職員の方々も、その点を確認しながら、ご一緒に進んでいきたいと念じています。